私の王子様-13
「ごめんごめん、くくっ……なんか嬉しくてつい……ね」
デレクシスの事が好きだから不安になる。
ジェノビアの事が好きだから不安になる。
(まったく……いくつになっても恋愛は難しい)
デレクシスはジェノビアをぎゅっと抱き締めて、ありったけの気持ちを込めた。
「私はジェノビアがウィルでも、ウィルじゃなくてもジェノビアが好きだ。でも、ウィルじゃないジェノビアに愛してもらいたい」
デレクシスの腕の中でジェノビアは目をパチパチさせる。
「ウィルを今でも愛してる。でも、ジェノビア……君も愛してる。こんな女々しい男は嫌かい?」
「そんな事ないですわ!ウィルさんの様に愛されるのは女性にとっては理想です!」
いつの間にかシャックリが治まったジェノビアは、デレクシスの服を強く握って顔を上げた。
その蒼い目はウィルと似ている様で全く似ていない輝き。
どこか憂いを帯びた蒼ではなく、どこまでも澄んだ深い海の蒼。
姿の見えない風に煽られ、さざめく波の様に揺れる瞳がデレクシスにはとても眩しく見えた。
デレクシスは眩しそうに目を細めると、ジェノビアの頬を両手で包んだ。
「なら、ジェノビア姫。私と結婚していただけませんか?」
「!」
「君を、君の理想通りに愛する事を誓う。君が私を受け入れてくれる限り……傍に居ると約束するよ」
ジェノビアの蒼い瞳から再びボロボロと涙がこぼれる。
しかし、その雫は宝石の様にキラキラと輝いていた。
「はい!はい!おじ様っ!ノービィは産まれから死ぬまでおじ様のものです!」
「う〜ん……死んでも、は贅沢かな?」
「!いいえ!おじ様!やっぱりおじ様はノービィの理想です!ああ、おじ様!愛してます」
ジェノビアはデレクシスの手を振り払い、その首に抱きついた。
フワフワの金髪が顔に当たり、デレクシスはその感触を楽しみながら彼女を抱き返した。
窓から西陽が差し込み、2人の周りに散らばるガラス片が光を反射する。
まるで、2人の門出を祝福するかの様に、光はキラキラと抱き合う2人を照らしていた。
同時刻、ジェノビアの部屋の前には3人の人間がドアにべったり張り付いていた。
「……どうされますか?王弟陛下?」
初めに声を出したのは宮廷魔法使いのノア。