上司と部下-7
席は一番前の席だ。子供のように目を輝かせる海斗。すると試合結果前の練習をしに選手が入ってきた。目の前で選手が整列した。
「おーい、柴原ーっ!!ヘマすんなよーっっ!!」
物凄い声で怒鳴ると柴原が2人に気がついた。ニコッと笑い親指を立てた。
「おい見たか!?俺に合図したぜ!?」
「あれは私にですよ〜!」
「馬鹿、俺だよ!」
「私ですよぅ。岳ちゃんカッコイイ〜」
「けっ!!」
柴原の笑顔にハートを撃ち抜かれてしまった幸代。ファンになってしまいそうだった。選手を鼓舞するかのようにサポーターが大合唱を始めた。
「ヤバイ…、鳥肌立ちました…。」
「ああ、イッちゃいそうだぜ…」
試合前から生観戦の素晴らしさに魅了されてしまう。練習が始まると応援も一段落する。
「幸代、何か食うか?買ってきてやるよ。何がいい?」
「あ、はい。お任せします。」
「そっか。じゃあ適当に買ってきてやるよ。」
「はい、すみません。」
海斗は食べ物を買いに行った。お任せすると言ったが、海斗が何を買ってくるのか何となく分かっていた。
やがて海斗が帰って来た。
「ほら。任せるって言ったから適当に買ってちゃったぞ?」
海斗はカレーライスと牛串を幸代に渡した。
「ありがとうございます!(ほらね♪)」
予想通りだった。カレーは幸代の大好物、牛串は以前友達と観光地に行った時に食べて美味しかったと話した事がある。海斗ならそんな自分を考えてそれらを買ってくると思ったからだ。幸代は足をバタバタさせて嬉しそうに笑った。
「あとこれ♪」
そう言って差し出したのは名物のメロンシャーベットだった。メロンを半切りにして真ん中をくり抜き、そこにシャーベットが入っているデザートだ。
「わっ!すごーい!!」
目を丸くして喜ぶ幸代に自慢気に言った。
「お前、メロン好きだもんな?」
「はい!ありがとうございます!」
心から嬉しさがこみ上げてくる。自分をちゃんと知っていてくれる事に満面の笑みを浮かべては答えた。
「さ、食おうぜ!」
「はい!」
食べながら色々話す。仕事とは全く関係のない話だ。ボケる海斗に突っ込む幸代。他人から見れば本当にいいコンビだ。
「ちょっとカレー、くれな?」
「あ、はい。」
スプーンですくって食べた。
「おっ、ウメーじゃん!!」
ハイテンションな海斗に呆れて笑ってしまった。幸代は海斗がすくった部分をドキドキしながらすくって口にした。
「ホント、美味しい…」
カレーの味がほんのり甘く感じた幸代だった。