上司と部下-6
チケットを切ってもらいスタジアムに上がる階段を昇る2人に、既に始まっていた応援合戦が聞こえる。
「な、なんか知らないけど、興奮してきた…!」
「はい!」
幸代もドキドキしてきた。生のスポーツ観戦は初めてだ。胸が高鳴る。
「誰だ?スポーツなんてテレビで観てるのが一番いいだなんて言ったのは!」
「あなたです…。」
「オメーだろ?」
「海斗さんの口癖じゃないですか!?」
「覚えてねっす。」
「…感化されやすいんですね。」
「感じやすいとは良くオネーサンに言われるけどね!」
「し、知りませんよ、そんなの!」
そんな会話をしながら階段を昇り終えた。入口から中が垣間見える。歓声も間近に感じ、感じやすい海斗はもはやいても立ってもいられずに走り出してしまった。
「ま〜しぃ〜まアントルーズ!!」
応援に合わせてそう大声を出しながら観客席に向かって走る海斗に幸代は苦笑いを浮かべた。
「子供か!?ったくぅ…。待って下さいよぅ!!」
幸代も走って海斗を追い掛ける。コンコースから観客席に出た瞬間、まばゆいばかりのスタジアム内に目が眩んだような気がした。超満員のスタジアムが燃え上がるエナジーは幸代を圧倒した。
「す、凄い…」
目と口を見開き眩いばかりのスタジアムに見とれてしまった。
「す、スゲーな!こりゃスゲー!やっぱスポーツは生観戦に限るな!!」
「良く言いますよ…」
すっかりはしゃぐ海斗は本当に子供のように興奮していた。
「ほら、幸代!行くぞ!!」
「あ、はい…」
海斗は幸代の手首を握り引っ張って席へと急ぐ。ドキッとした幸代。始めは固まってしまった手だが、ゆっくりと海斗の手に近づけ、そして触れた。
「…」
嬉しかった。海斗と触れ合い幸せな気分になる。ドキドキしながら幸代は海斗に腕を引かれていた。