大きな背中-1
数日後、出勤しパソコンをつけた瞬間にある事を思い出した幸代。
「あ!真島アントルーズの限定ユニフォーム頼むの忘れてる!!」
慌てて同僚に問い合わせた。
「いや、あれはもうないよ。確か一昨日でなくなったはずだよ?」
同僚の柳瀬貴文がパソコンで予約状況を確認した。
「やっぱもうないよ。」
「そんなぁ…。キャンセル待ち入れておけば1枚ぐらい何とかなります??」
「いや、無理だよ。キャンセル待ちだってもう10件入ってるもん。」
「メーカーに問い合わせても…」
「いやー、厳しいと思うよ?割当は決まってるからね。あとは支店に電話して残ってるかを片っ端から聞いていくしかないな…。」
「わ、分かりました!ありがとうございます!」
幸代は電話帳を引っ張り出しひたすら電話をかけまくる。
「いや〜、ないですねぇ。」
「ウチも欲しいぐらいだよ。」
断りの返事ばかりだった。県外の支店にもかけたが、さすがに県が違うとなると需要がなく予約すら対応していない所ばかりだった。
「どうしよう…全然ない…。」
なぜすぐに押さえておかなかったんだと後悔した。
(海斗さんに相談しなきゃ…)
今日は朝早く一人で仕事に出かけた海斗に電話をする。しかし手が放せないのか出てくれなかった。
(どうしよう…)
幸代はひたすら悩み仕事が手につかなかった。
(早く電話下さい…)
心の中でひたすらそう願っていた。会社に入ってから今まで、こんなに動揺した事はない。それは隣にはいつも海斗がいてくれたおかげだとはいつも思いながらも、心のどこかでは1人でも出来ると自信を持っていた。そして徐々に仕事を任されるようになり独り立ちに向け頑張っていたさなかでのミス。自分の自信はこんなにも脆いものであったんだと言う事を今実感していた。