大きな背中-8
店内に入り3人で話をした。
「おい、海斗君…。あんな約束して大丈夫なのか??」
心配になっているのは宏も同じだった。
「まだ手は打ってないからね。でも大丈夫だよ、きっと。」
「まぁ海斗君が自信満々に約束するって事は大丈夫なんだろうが…。」
「最悪、あの母ちゃんを食っちまうとか、さ。アハハ!」
「おいおい…。」
溜息をつく宏。幸代は椅子に座り固まっていた。
「俺はあの親子にこれからも宮島スポーツで買い物してもらう為、そしてこれからもこいつと宮島さんにいい関係で仕事をしてもらえる為に努力するまでさ。」
幸代はハッとして顔を上げた。
「いいか幸代。ミスは仕方ない。俺も良くする。しかしその後どういう対応をするのかが問題だ。この件がもし大手のアントニーとかだったならもう取引を中止されてるだろう。しかし宮島さんは待ってくれてるんだ。大手にはない温かさをお前が気付くか気付かないかが大事だ。取引を中止されたらそこまでだ。でもそれからのお前次第で小さな所は許してくれる。だから小さなとここそ俺達をセールスとして育ててくれるんだ。宮島さんを始め小さな所を大事にしていなかったら今の俺はない。これだけはハッキリ言える。」
「はい…。」
頷く幸代。
「けっ!小さい小さい馬鹿にしやがってよ!」
海斗の言葉に心を揺れ動かされた所があったのか、鼻の下をかき照れ臭そうに言った宏。
「いーじゃんかよ、いくら小さくてもそれに勝るいいとこたくさんあんだからよ!」
「そー言ってもらえると有難いが、な?ハハハ。」
ようやく表情が和やかに戻った宏。
「まぁねーちゃん、海斗君の背中を見てどういう仕事をするのか勉強するがいいさ。」
「はい!本当に申し訳ございませんでした!」
そう頭を下げて2人は宮島スポーツを後にした。