大きな背中-11
「いやぁ、助かっよ岳ちゃん!」
事もあろうに日本代表さまのみ柴原岳になれなれしく感謝する海斗に幸代は焦った。
「いやぁ〜、海斗さんに頼まれたら断れないっすよ〜。」
「だよなー!アハハ!」
満面の笑みを浮かべる海斗に幸代は疑問を投げかける。
「海斗さんは柴原選手とどういう関係なんですか??」
「ん?師匠!」
ニカッと笑う。
「海斗さんてサッカーやってましたっけ??」
そんな話は一度も聞いた事がないし、それにそうだとしても日本代表の師匠にはとても思えなかった。
「はっ?やってねーよ。ルールも知らんわ。」
「じゃあ何の師匠なんですか?」
「あっ?釣り!」
「つ、釣り…??」
ポカンとした顔で海斗と柴原の顔を見た。
「こいつよー、釣り場で良く見かけてたんだよ。でも下手くそでな〜。全然釣れねぇんだよ。そしたらある時、釣り方を教えてくれって言ってきたから教えてやったんだ。そしたらすぐにデッかいカンパチ釣ったんだよな?」
「はい!」
「それから仲良くなってな。顔見ると隣で釣りをするようになったんだよ。で、色々と話すうちにサッカー選手だって知ってな。どうせ下手くその2軍だと思ってたらさ、テレビに映ってやがんの!ビビッたね。まさか真島アントルーズのレギュラーだとは思ってなかったから馬鹿にしてたんだけど、意外にスゲーんだよな、オメー?」
「ハハハ、意外に努力してるんで。」
海斗の失礼な言葉もニコニコしながら聞いていた。
「で、無理言ってお願い聞いて貰ったんだよ。初めは何かそーゆーお願いするの嫌だなって思ったんだけど、宮島スポーツの為だから思い切って頼んだんだよ。」
「そ、そうだったんですか…。」
そう言うと、柴原は悪戯っぽい口調で海斗には言った。
「あれ〜?確か可愛い部下の為にってお願いされたはずですけどね〜?」
「えっ?」
幸代は海斗の顔を見た。
「ば、馬鹿!テメーコノヤロ!それは言うなと言っておいただろうが!!」
「そうでしたっけ??ハハハ、確かに可愛い部下っすね!!」
「やかましいわ!!」
海斗は珍しく顔を真っ赤にして動揺しながら運転していた。
「じゃあな!今日はありがとう。明日観にいくからな!」
「はい!じゃ、明日!」
柴原を降ろして車を走らせた海斗だった。