海斗と幸代-8
宮島スポーツ店は商店街の中にある個人のお店だ。地元の小学校などに注文を受けている老舗の店である。こじんまりとしているが陳列されている商品のセンスはいい。地元から愛されているスポーツ店だ。
「失礼します。」
幸代が店に入る。すると店長である宮島宏が片手を挙げ答える。
「よっ!」
「こんにちわ。お世話になります!」
頭を下げる幸代。
「相変わらず固いな、ネーチャン!」
そうは言ってもまだまだ新人の部類に入る幸代はどうしても堅苦しさは抜けない。
「まー、おっちゃん。こいつの真面目なとこはいいとこなんだからそう言うなって!」
後ろから海斗が言った。
「オメーは砕けすぎなんだよ!」
「それが俺のいいとこさ!ハハハ!」
笑う海斗。幸代には一生真似できない事かもしれない。そんな海斗に宏も笑っていた。
「ネーチャンも大変だなぁ。こんな変人と仕事しなきゃならないなんてよ!」
「い、いえ…」
はいとも言えず曖昧に答えた。
「んでどうした?今日は。」
「あ、冬の新製品が出たんでご紹介をと思いまして…?」
製品リストを渡す幸代。
「そうか、もう冬物考える季節か。早いなぁ、1年ってよ。あ、そうだ。客から真島アントルーズの限定のユニフォームの注文を受けたんたが間に合うか?」
同じ県にあるJリーグチームの真島アントルーズの限定ユニフォームが数量限定で予約制で発売されていた。クラブハウスではすでに締めきっていたがまだ若干残っているという情報は流れていた。
「あ、多分大丈夫だと思います。」
「じゃあ頼むわ。」
「はい、分かりました。」
幸代はそう答えて冬物の案内をしようとした。そんな幸代に厳しい視線を向けた海斗だった。