海斗と幸代-4
「あ、メールだ?」
海斗はメールを開く。知香からだ。
「『海斗さん、さっきはありがとう!もう諦めかけてたの、あのストラップ。だから超嬉しいですぅ!今度何か御礼をさせて下さいね♪大好き♪』だってさぁ〜!可愛いなぁ知香ちゃん♪どっかの誰かさんとは大違いだ!」
今までの喧嘩はどこへ的なデレデレ顔にイラッとする幸代。
「はいはいそーですね。私と違って知香ちゃんは可愛いですね〜。」
「ホッントだよな!デヘヘ!」
(くっ…このクソ釣りキチが!)
鬼のような表情を浮かべて顔を背け窓の外を見つめる幸代。確かに知香は可愛い。知香とは同い年だ。あの可愛らしさが羨ましくなる時もある。しかし自分には知香のように可愛らしい女になるのは無理だと充分に分かっていた。少し切ない気持ちになると興奮した気持ちも落ち着いた。
「ねぇ。」
「あ??」
「あのストラップ、遊びに行った先で偶然見つけたって言ったけど、本当はあちこち行って探しまくったんじゃないですか?」
何となくそんな気がした。
「くくく、分かるか?お前には見え見えだと思ったよ。まぁいつも仕事で無理聞いて貰ってるから、そのお礼として…か。」
「やっぱりね。男は可愛い女には弱いですからねぇ。」
「お前もその性格さえ何とかなれば充分に可愛らしいんだけどな!ガハハ!」
「性格はどうにもなりませんから!」
膨れあがってそっぽを向く幸代。そんな幸代に海斗は言った。
「まぁ買ったものに対して喜んで感謝してくれる女はゴマンといるが、その裏の頑張りを感じてくれる女はなかなかいないもんさ。」
「えっ…?」
ドキッとした幸代。
「さ、一件目だ。行くぞ。」
「あ、はい…」
いいところで訪問先についた。海斗の言葉の意味を聞きそびれた幸代たが、自分を褒めてくれたであろう言葉が少し嬉しかったりする。
(いつもズルイです、海斗さん…)
そう思って胸を締め付けられている自分が充分に可愛らしく乙女している事には気づかない幸代なのであった。