海斗と幸代-3
幸代が駐車場に行くと、海斗はイライラした様子で車の中で待っていた。そんな雰囲気の中に飛び込むのは誰でも嫌だ。物怖じしないのが幸代だ。しかも文句を言いながら助手席に乗り込んだ。
「一体何なんですか!?」
「何なんですかっちゃあ何なんだ!?」
「あんなワカメ塗れにして!信じらんない!」
「ウルセー!」
車を走らせる海斗。
「どうしてくれるんですか!このワカメ臭!!あ、思い出した!!私の体臭が酷いみたいな発言!取り消して下さい!」
みんなの前で恥をかかされた事が許せなかった。
「ルセェ!!」
「あれじゃみんな私が臭いって思うじゃないですか!?」
「じゃあ帰ったら体臭嗅がせて判断してもらえ!!」
「そんな事できる訳ないじゃないですか!」
「じゃあ臭い女でいいだろ!これから風呂入らなくてもいいから良かったな!」
「そんな言い方ないじゃないですか!」
激しいバトルが繰り広げられる。まぁいつもの事だ。苛つく海斗の運転は当然荒く…ならない。どんなに精神状態が悪くても法定速度は遵守する。特に幸代を乗せている時は物凄い安全運転だ。幸代は1人で運転している時の海斗を何度も見ているが、その時は完全なる飛ばし屋だ。ガンガン飛ばす。現に何度も違反キップを切られている。言葉で聞いた事はないが、幸代にはその理由が分かる。それは幸代を危険な目に合わせない為だと言う事を。こんな喧嘩をしていても運転に出さない海斗の優しさにはいつも後から気づくのであった。
とは言え喧嘩はマジだ。激しいバトルを続けた後、お互い疲れて黙り込んでしまった。