〈狂宴・後編〉-19
(い…嫌……男が…男が私に……さ、触ってくる……)
優愛の男性に対する恐怖感は、頂点にまで達していた。
あの凌辱を体験したのなら、無理からぬ事だ。
(……お姉…さん…何処…?お姉さん……!?)
恐怖の最中で藻掻く優愛は、景子の姿を探した……と、自分の前方に、あの変態オヤジが立ち、その足下に黒革のマスクを被った女性らしき者が、股間から肉棒そっくりな物をブラ下げて這っている……奈和にしては髪が長く、春奈は相変わらずギロチン台に拘束されている……よく回らない頭で考えても、それが誰なのか優愛には判らなかった……
『あの人は誰だろうね?ああ、間違えた……牝豚だったなあ?』
専務は、愛しそうに優愛の身体を包むように抱き締めると、耳元でそっと囁いた。
勿論、景子には聞こえないようにだ。
『クックック……アイツは君が寝ている間に、あの変態オヤジにレイプされてなあ……そうしたら悶え狂って大人しくなったんだぁ』
あの体付きを、あの髪の色を、優愛はよく知っている……だが、今、目の前で這っている女性は知っている人では無い……。
『いっぱい恥ずかしいコトをされたからなあ?イカされまくって骨抜きにされたから、もう君を助けたりしないよぉ?』
(……た…助け…ない…?だ……誰なの……?)
タムルは見ていた。
専務が優愛の意識を戻して、非情なる言葉を囁いているのを。
そして、まだ優愛はこのマスク奴隷が誰なのか、気付いてさえいない事までも。
『さあ、ディルドを落とさないようにして回れぇ……ゆっくりでイイんだからさぁ?ウヒヒヒ……』
「ッ!!!」
例え意識が働かなくても、視覚から入った情報は脳天までブチ当たり、優愛を地獄の底まで叩き落とす程の衝撃を与えた。
あの美しい肢体は、あの汚れたスーツは、あの赤茶けた長い髪は、あの顎のラインは……たどたどしく手足を動かし、あの変態オヤジの足下で犬のように回る女性は、紛れもなく姉の景子だ……。
(嫌あぁぁぁぁぁッ!!!)
心の中の悲鳴に同調した声は、ゴム栓に塞がれて外には響かず、膨らんだ頬の中に封印された。
まだ景子は、優愛が目覚めた事を知らないままだ。
『そこで止まれぇッ……ほぅら、そのまま頭を下げてケツを上げなさい……足を開くんだよぉクソ豚ぁ!!』
変態オヤジの指図に従い、景子は優愛に尻を向けて頭を下げると、股間を見せ付けるように両足を広げた。
優愛は信じられない光景から目を逸らそうとしたが、それは部下達の手によって防がれ、またも髪も瞼も手中に堕ちた。