キレイになってラブラブデート大作戦-6
向かった先は、スタッフルームか、バックルームか。
何の変哲もない白いドアを開けたと思うと、
「ヒロー! ヒロー! ちょっと来てえ!」
と、誰かを呼んだ。
そして、まもなく現れたのは、息を呑むくらいのすんごい美女。
え、もしかして天童さんの奥さん!?
寝ている所を起こされたのか、彼女のカッコは白いシルクのパジャマで、とても不機嫌そうだった。
普通の人の寝起きなんて、スッピンだし髪もボサボサだし、一番人に見せたくない姿だと思う。
だけど彼女に限っては、一向に気にしてない様子。
確かに、寝起きだというのにその素顔も、乱れた髪ですらも美しくて、目を離せないくらいだった。
「何よ、あたし今日休みよね。少しはゆっくり寝かせてくれない?」
「ごめんねぇ、こちらのお客さんを変身させるんだけど、あんたの力が必要なのよ」
天童さんに言われて初めて、私の存在に気付いたのか、ヒロさんはゆっくり私を見た。
「誰……?」
気だるそうにそのロングヘアーをかきあげ、私を少し鋭い視線で睨むヒロさん。
「今日休みよね」って言うくらいだから、彼女もまた、このお店のスタッフなんだろう。
けど、ホントに接客業やってんのかってくらい、彼女の視線は不躾。
多分いつもの私ならきっとキレてる。
でも、ヒロさんがすごい美女だからか、睨まれてしまったことすら、眼福にあずかったような気がしてついつい何も言えなくなる。
「えっとね、天慈くんの義理のお姉さんよ」
天童さんがニコニコしながらそう言うと、ヒロさんの眉がフッと緩んだ。
「へえ、天慈くんの」
「そう。天慈くんのお兄さんの奥様で、今日はご主人と二人でデートするから、とびっきり綺麗にしてやってってオーダー頂いてるの」
そのあとで天童さんは小声で「カットモデル料金で」と、付け加えた。