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nightmare
【レイプ 官能小説】

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後妻-2

 前方を妻が歩いていた。後ろに束ねた髪がリズムよく左右に振れている。足は最寄りの商店街に向いていた。
 女性にしては身長のある秋穂はその脚の長さもあってか、歩くペースが速い。十歳以上年長の私にとって、後をついていくのはたいへんな作業に思えた。しかも、そのことを知られてはならない。彼女からはついてこないよう釘を刺されていた。
 妻を送り出した後になって、息子がいっしょにいる友人というのが妙に気になった。最近、息子の通う学校が荒れてきたという噂を聞いていた。顔だけでも見ておこうと、思い立ったのだ。
 秋穂は商店街の奥まった方にある繁華街へと進んでいく。もともとあった繁華街のそばに住宅地が進出してきたため、商店街と隣り合っているという珍しい街並みだった。
 バタバタと身繕いをしたにしては、妻は正装ともいうべき、薄い紺のジャケットに揃いのスカートを身につけていた。上着の中は襟もとの開いた部屋着から首もとまでしっかりと覆われた純白のブラウスに代わっており、肌の露出を極力避けようとする人妻のたしなみをうかがわせた。膝丈のスカートの下にはおそらく肌の色にちかいストッキングを着用しているのだろう。時折、ネオンに照らされて浮かぶ生地の光沢が引き締まった脚に映えていた。
 全体的におとなしめの色合いは軽剽すぎず、かといって重すぎることもない。このまま授業参観にいくといっても通用しそうだ。夜遊びにかまけている息子を迎えにいく母親の装いとしては少々出来すぎのような気がした。
 猥雑な盛り場をシュッと背筋を伸ばして歩く若い女性の姿は目立った。すれちがった男たちのなかにはわざわざ振り返って妻の後ろ姿を追う者もいた。
 そのうちの何人かは露骨に好色な目を向けていた。あくまで清楚さを基調とした服装だったが、若く瑞々しい肢体や新妻の醸し出す妖艶な色香を完全に隠すことはできなかったようだ。私は妻が大勢の男から目で犯されているような気分を味わった。
 最初は遠巻きに様子を眺めていた男が声を掛けてきた。男は低姿勢だったが、卑屈さは感じなかった。女扱いに長けているもの特有の自信を漲らせていた。
 夜の街とのミスマッチに男は訳ありの女とみたようだ。値踏みするように妻の全身に眼を走らせる。しかし、秋穂が一言なにか返すと、引き攣ったような表情を浮かべた。
 秋穂は呼びこみともナンパともしれない男の誘いを適当にやり過ごすと、肩からかけたバックを颯爽とひるがえした。その後姿はたいそう凛々しく、女性らしいプロポーションとスカート姿でなければ、さしづめ男装の麗人といった風情だった。
 数メートル先を歩く美女とあとを尾ける冴えないこの中年との組み合わせを果たして夫婦と関連付けることのできる者が何人いるだろうか。意外に思われるかもしれないが、求婚してきたのは彼女のほうだった。
 どうやら死に際に親友である前妻から、「正樹のことを頼む」と後を託すようなことを言われたらしい。その今際の言葉が彼女に正樹の母親になる決心をさせた。
 これまで秋穂を夫の目で、あるいは正樹の母親としてみてきた。だが、こうやって一人の女性としてみたとき、彼女は私の伴侶としてふさわしいのだろうか。ふと、そんなことを考えた。
 妻が往来の真っ只中で、立ち止まっていた。私は慌てて物陰に身を伏せた。
 バッグを探った妻はなにげなく、周囲を見まわしていた。手には携帯電話を持っていた。
 電話機に向かって、なにかしゃべっている。相手はおそらく正樹だろう。
 私は会話を聞き取ろうと、少しでも近くにと陰から足を踏み出しかけ、やめていた。秋穂が携帯を耳にあてたまま、こちらに戻ってきた。
 まさか尾行がばれたのか。そんな心配をしたが、見当ちがいのようだった。身を固くする私の側を妻は足早に通り抜けていった。
 私は再び後を追った。



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