真夜中のファミレスにて-2
別に理由が漠然としている彼に対してイラついているわけではない。でも何故か可愛くなれないあたし。彼はあたしの全てを知っていて、本当のあたしを知らなすぎたのだ。
『まぁ、関係ないな』
そう言って笑う彼はあたしが知ってる彼じゃなかった。あたしは彼の事が分からない。何を考えているのか。
『そうだよ』
また、タバコに手が伸びる。
『お前彼氏は?』
『いるように見える?今のあたしが好きだって言ってくれる人なんていないよ』
彼と別れてから、大分月日は経った筈だった。
あたしは何も変わっていない。
『……実は…さ、』
彼が口を開いた。今までの不審な言動をこの先の言葉が裏付ける事になるのは明らかだった。
『なに』
もぅ、今更何を聞いても驚きはしないし、傷付かない。
『お前に謝りたくて』
小さかった。あたしの目の前にいるのは確実に彼なのだが、あたしの知らない彼だった。
あたしが知ってるのは、態度がでかくて、いつもいつもあたしを物みたいに扱う。女を人間と思っていない様な。自分勝手な、プライドの高い男。
プライドの高さが大きく見せていた原因だと知った。
今、あたしの目の前にいるのはプライドのない男。
『今更謝ってもらいたくないんだけど。あんたあたしにどれだけ酷いことしたか分かってんの?』
彼の目線がこっちへ飛ぶ。あの目だと感じて一瞬たじろぐ。でも、あの目は消えて、哀れみにも似た顔を向けてくる。
もぅ、やめてよ…
『もぅ、いいよ。でも、許したわけじゃないから』
あたしはそう言ってまたタバコに火をつける。
『…分かってる。本当ごめん』
『いいって。それよりそっちはどうなの』
『…あいつとは別れたよ』
煙を吐き出した。
彼は煙の中で言った。
煙で彼がハッキリ見えない。
『…俺、やっぱお前の事忘れれねぇよ…』
さっきまで漂っていた煙が消えて彼が見えだす。
もぅ1度と何度も煙を出して彼をボヤけさせた。