災い転じてまた災い!?-6
ナンパできるような男って、打たれ強く、ポジティブな人間が多いのか。
それとも、単に俺が彼氏と知って、見くびったのか。
沙織が、俺と付き合っていると明言したことで、闘争心に火を点けてしまったらしい。
「つーか、オレ達、彼氏がいても関係ねえし」
「きゃっ!」
タトゥーがニヤリと蛇みたいにジメッとした笑みを浮かべると、沙織の腕を引っ張って自分の側に引き寄せた。
「やめろよ!」
咄嗟に沙織の身体に手を延ばそうとするけれど、マッチョに突き飛ばされてペタンと尻餅をつく。
びっくりして見上げると、マッチョはゾッとするほど冷たい眼差しで俺を見下ろした。
「……ちょっとの間遊ぶだけだろ、邪魔すんなよ」
低い声に、まるで蛇に睨まれた蛙のように、身体が強ばる。
コイツらは今まで好き放題に生きてきたんだろう。
“人のものを取ってはいけません”という、幼稚園児でもわかるようなルールだって平気で破って、自分の欲望に忠実に従って生きてきた、そんな背景をたったその一言で垣間見ることができた気がする。
「倫平!」
駆け寄ろうとする沙織を、タトゥーだけじゃなく、坊主までもが反対側の腕を掴んで押さえ付けた。
「いーって、あんなダセェ男より、オレらと遊んだ方が楽しいよ?
おいでよ、ジェット乗せてやるよ」
「やっ……!」
そう言って、沙織を両脇からしっかりホールドして、俺の側から遠ざかろうとするタトゥーと坊主。
「つーわけで、彼女しばらく借りるから」
最後っ屁のように捨て台詞を吐いたマッチョが、その後を追う。
俺は、ただその場に尻餅をついたまま、呆然とその一連の流れを眺めることしかできなかった。