災い転じてまた災い!?-3
沙織が可愛くてモテるのは今に始まったことじゃない。
俺という彼氏がいても、告白する奴はいたし、それどころか“彼氏にナイショで付き合おう”と誘うバカもいた。
それでも沙織は絶対に流されず、その都度俺にちゃんと報告して誠意を見せてくれた。
そんな沙織をいとおしく思う反面、不安もある。
付き合ったからって言っても、それが男を寄せ付けなくなる理由になるわけじゃない。
彼氏がいたって、隙あらばかっさらおうとする奴はいるわけだし、彼氏という障害があるからこそ燃えるとほざくバカもいる。
だから、沙織が他の男にちょっかいを出されているのかと思うと、不安で気が狂いそうになる。
以前、そういうバカ共をなんとかなんないのか、と修に愚痴ったことがあるけれど。
――それが、可愛くてモテる女を彼女にした宿命だし、それが嫌なら悪い虫を追っ払うしかねえだろ。
と、にべもなく修はハッキリ言った。
あまりにハッキリ言う修に、その時はなんで俺の気持ちをわかってくれないんだ、と思ったけど……。
「ね、一緒に泳ごう」
「ご、ごめんなさい。あたし……」
「照れなくてもいいって、ホラ」
「や、やめ……」
沙織の細い腕を、タトゥーだらけの男が掴むのが目に入る。
でも、今なら修の言葉の意味がわかる。
沙織は可愛くて男にモテる。
たとえ、俺という彼氏がいても、だ。
だったら悪い虫を追っ払うのも、彼氏である俺の役目じゃないか!
俺はギュッとキツい瞬きをしてから、
「ちょっと待て!」
と、少し離れた所から大きな声を出した。