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愛しているから
【青春 恋愛小説】

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災い転じてまた災い!?-4

波の音、はしゃぎ声で賑わっているはずのビーチだけど、俺達の周りだけやけに静かな気がした。


俺の声を聞いて、沙織を始めナンパ男らが一斉にこちらに注目する。


奴らの眉間にシワを寄せた、“何だコラ”と言いたげなメンチ切りに、背筋に冷たいものを感じた。


途端に身体から嫌な汗が吹き出し、喉は渇き、膝が笑い出す。


奴らの鋭い視線にすでにビビりまくってしまった俺は、このまま遠くへ逃げ出したくなってきた。


「倫平……!」


そんなヘタレな俺を奮い立たせたのは、やはり最愛の彼女の声だった。


今にも泣き出しそうな沙織の表情は、俺の姿をみて安堵したのだろう。


俺が助けてくれる、と。


未だタトゥー男に腕を掴まれたままの沙織は、悪者に捕らえられたお姫様のように見えた。


ってことは、俺はさしずめ囚われのお姫様を助けに来た、勇敢なナイトってとこか?


なぜだろう、そう思えば、さっきまであんなに震えていたこの身体が、武者震いのような気がして、パワーが胸の奥からたぎってくるような気がした。


「何だ、てめえ」


つかつかと肩をいからせて歩いてくるマッチョな色黒男が、目の前に立ち塞がる。


太い首に目つきの悪い顔。見るからに悪者である。


そんな奴に、俺は唾を吐き捨てるように、


「人の彼女にちょっかい出すのやめてくれねえ?」


と、言った。


「は? 何つった、今」


「だから、その娘は俺の彼女だから、ちょっかい出すなっつってんたよ!」


……決まった。


内心そう思いながらマッチョを睨み付けてやると、さっきまで飛び掛かりそうな勢いだった奴は、ポカンと口を開けたまま固まっていた……が、次の瞬間、


「ぷっ……」


と、堪え切れずに息を漏らしては、盛大に噴き出すのだった。





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