災い転じてまた災い!?-2
呆然と立ち尽くす俺に、沙織は全く気付いていない。
でも、俯いて萎縮している後ろ姿からは、怯えているようにしか思えなかった。
EXILEに紛れていそうなラインの入った坊主頭の男。服着てんのかってくらいのタトゥーだらけの身体の男。そしてやたらとマッチョな色黒男。
正直、こんな3人に囲まれたら、俺だってビビる。
「緊張してる? 可愛い〜」
「スタイルいいねえ」
「怖がんなくていいよ」
気さくに話しかける野郎共は、時折沙織の二の腕やら肩やらぽんぽん叩いてフレンドリーな所をアピールしてるんだろうが、その度に沙織の身体がビクンと強張っている。
クソ、沙織に何ちょっかい出してんだ!
脳内では威勢よく、奴らの前に立ちはだかるのだが……。
「あ、あれ?」
いざ歩みを進めようと、右足を前に出したその刹那、膝がカクンと折れたみたいに脱力し、そのまま砂浜に膝から崩れ落ちてしまった。
咄嗟についた手も、やけに力が入らない。
そう、俺は恐怖のあまり、震えて動けなくなっていたのだ。
滴るような汗で手のひらや脛に砂が貼り付いてくる。
ほんの少しの距離には、怖がりっぱなしの沙織の後ろ姿。
助けなきゃ、という頭とは正反対に、身体はすくんで動けない。
勃って欲しくない時に勃つわ、動いてほしい時に動けないわ、何なんだ、俺の身体は!
目と鼻の先なのに、ビビって沙織に助けにいけない自分のヘタレ加減に、泣きたくなってきた。
「ね、お昼食べた?」
「今日はどこか泊まるの?」
「連絡先交換しようよ」
矢継ぎ早に話しかけてくるチャラ男達に、
「あ、あの……」
沙織はほとんどまともに喋ることが出来なかった。