よみがえりの木-3
「ああ、メイちゃん、久しぶり! 元気にしてた? 美奈ちゃんも一緒なのね、さあ、上がって」
駅近くの、高層マンション。
広い玄関に走り出てきた蘭は、子供の頃と変わらない、弾んだ声とふんわりとした微笑みで迎えてくれた。
雪のように色白なのも、部屋の中でもきちんと髪を整え、ひらひらとしたワンピースを好んで着るのも、昔のままだ。
……べつに、なにもおかしいところなんてないじゃない。
ちらりと視線を向けると、美奈は黙ったまま、小さく首を左右に振った。
細い廊下を抜け、リビングルームに案内される。
「おじゃまします……」
部屋に入ろうとしたメイは、思わず息をのんだ。
視界が、緑に埋め尽くされる。
二十畳はあろうかという、広い空間いっぱいに。
あらゆる種類の観葉植物らしき鉢植えが、足の踏み場のないほどずらりと並べられていた。
むせかえるような、土と緑の匂い。
美奈が、隣で悲しげに眉をひそめている。
「あ、あの……す、すごい、部屋、ね」
何か言わなくてはいけない。
そう思うのに、メイは混乱するばかりで、たったそれだけの言葉を絞り出すことしかできなかった。
「うふふ、ここはね、パパのマンションなの。一番日当たりがよくて広いお部屋、もらっちゃった」
野乃塚家は、昔から不動産業も手広くやっており、この町では有名な富豪だ。
だから、そのひとり娘である蘭が、贅沢三昧な生活をしていても不思議はない。
問題は、誰が見たってわかる。
この、山のような鉢植えは、いったい何?
「さあさ、座って。有名ホテルから取り寄せたケーキがあるの、メイちゃんはチョコが好きでしょう? 美奈ちゃんは生クリーム」
ゆるゆると歌いながら、蘭はキッチンへとむかう。
しかたなく、鉢植えの隙間に体をねじこむようにして、美奈と肩を寄せ合いながら床に座った。