投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

よみがえりの木
【ホラー その他小説】

よみがえりの木の最初へ よみがえりの木 2 よみがえりの木 4 よみがえりの木の最後へ

よみがえりの木-3

「ああ、メイちゃん、久しぶり! 元気にしてた? 美奈ちゃんも一緒なのね、さあ、上がって」
 駅近くの、高層マンション。
 広い玄関に走り出てきた蘭は、子供の頃と変わらない、弾んだ声とふんわりとした微笑みで迎えてくれた。

 雪のように色白なのも、部屋の中でもきちんと髪を整え、ひらひらとしたワンピースを好んで着るのも、昔のままだ。
 ……べつに、なにもおかしいところなんてないじゃない。
 ちらりと視線を向けると、美奈は黙ったまま、小さく首を左右に振った。

 細い廊下を抜け、リビングルームに案内される。
「おじゃまします……」
 部屋に入ろうとしたメイは、思わず息をのんだ。

 視界が、緑に埋め尽くされる。
 二十畳はあろうかという、広い空間いっぱいに。
 あらゆる種類の観葉植物らしき鉢植えが、足の踏み場のないほどずらりと並べられていた。
 むせかえるような、土と緑の匂い。
 美奈が、隣で悲しげに眉をひそめている。

「あ、あの……す、すごい、部屋、ね」
 何か言わなくてはいけない。
 そう思うのに、メイは混乱するばかりで、たったそれだけの言葉を絞り出すことしかできなかった。
「うふふ、ここはね、パパのマンションなの。一番日当たりがよくて広いお部屋、もらっちゃった」

 野乃塚家は、昔から不動産業も手広くやっており、この町では有名な富豪だ。
 だから、そのひとり娘である蘭が、贅沢三昧な生活をしていても不思議はない。
 問題は、誰が見たってわかる。
この、山のような鉢植えは、いったい何?
 
「さあさ、座って。有名ホテルから取り寄せたケーキがあるの、メイちゃんはチョコが好きでしょう? 美奈ちゃんは生クリーム」
 ゆるゆると歌いながら、蘭はキッチンへとむかう。
 しかたなく、鉢植えの隙間に体をねじこむようにして、美奈と肩を寄せ合いながら床に座った。


よみがえりの木の最初へ よみがえりの木 2 よみがえりの木 4 よみがえりの木の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前