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好き…だぁーい好きなんだからっ!
【幼馴染 恋愛小説】

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一筋の光-1

「それでさぁー、あまりにもリアルな物で、写真かと思ったよ。」
「へぇー、少年画家サンでも違いが見抜けない何て、そりゃよっぽどだね。」
「今でも、川の流れ具合を表現するのとか手こずって…。」
「しかし凄いよ、いつ見ても開いた口が塞がらんよ。」
「ははっ!杏だって慣れれば大丈夫だよ。」

彼と過ごす暖かい時間、そう、私はこの温もりが欲しくてここへ来た。小樽まで遥々来て
今では本当に良かった。

絆の入院する小樽まで今ではすっかり行き慣れた、右も左も判らず駅員サン達に訪ね回ってた頃が嘘のようだ。休みの日となれば毎日と言っていいように、ここへ足を運ぶ。

「小樽って素敵な街ね、最初は絆に会いたい一心で、周り何かまるで眼中になかったけど
一安心してから、色んな観光名所に心奪われたわい。」
「だね、僕も看護師サンからこの街の事を聞いてワクワクしたな。」
「人力車に運河、海に水族館、いやーイルカショーとか観たいなぁー。」
「ならこのまま一緒に行っちゃう?」

大好きな彼と、そんな小樽の街をデート…、あぁ想像しただけで心躍る、でも。

「行けたら良いね。」
「っ……。」

不意に現実を突きつける私、彼は先ほどまでの勢いが沈み。

「ゴメン、変な期待持たして、無理だって解ってるのに。」
「絆…。バカね無理とは限んないでしょ?前にも言ったよね?」
「それは…。」
「奇跡を信じましょう、嘘偽りのない強い想いは必ず現実となるから。」

医師も全力で適合者を探してくれてる、それでも足りないと思う私は、毎日のように地元神社へ向かい、神様にもお願いしている。

「毎日…、大変じゃないか。」
「そうだね、でも絆の為だもん!早く元気になって、また一緒になりたいもん。」
「杏…。」
「神様に言ったのさ…早くこんな病から解放されて、思う存分自由にやりたい事をやって
そして幸せに過ごさせてあげてってねっ!」
「っ………。」

目を見開く彼、何か言葉を掛けるでもなく、彼へ近づき。

「ありがとうっ!やっぱり僕は君の事が大好きだ!」
「絆…、私もね、ずっと、ずっと考えてた…貴方の事ばかりを。」
「僕だって、ベットの中で、君の事を…。」

そして彼は、私の唇に自分の唇をくっつけ……。

「ん………。」
「………、あ。」

現実に戻ったような、少し抜けた声、私は顔を離し彼の向いてる方向に首を向けると。

「拓海クン?」

視線の先に、茶髪の10歳くらいの男の子がドアの所で立っていて。その子供の名前を口にする絆、知り合いか?

「驚かせちゃったかな?えと、彼は拓海クン今村拓海、同じ病院に入院してて。」

気弱そうでとても痩せていて、何処となく絆と似ている。どうやら彼も絆と同じ持病を持ち、両親は離婚し母親と二人で住んでいる。

「ねぇ、またあの絵、見せて!」
「あの公園の絵かい、いーよ、ちょっと待ってて。」

微笑ましい…、彼もまた絵が大好きで、ある日庭で描写をしていた所を、彼が見つけ絆の絵を覗き、そこから二人の関係が始まったそうで。

「うわぁー、すごーい。」
「前にも見たでしょ?」
「ねぇねぇ!僕もまた絵描いたんだ!見て欲しいな。」
「え?…いやーでも。」

顔を歪める絆、ここは病院であって軽々しく患者が別の病室に入っていい訳ではない、妙な所で固い規則があるようで。無邪気に絆の腕を引っ張る拓海クン。

それでも動こうとしない絆、不意に私に助け船を渡すように視線を送る。しかし私もどうしていいやら、子供は苦手でも得意でもない、会ったばかりの子供に正しい事でも嫌がる事をしてもいいものやら。故にどーする事も出来ず、あたふたしていると。

「あっ!いたいた、もぉーまた勝手に病室抜け出してぇ!」

彼の母親と思しき若い女性が、眉を尖らし、居なくなった息子の元へ駆け寄り、絆を軽く
困らせるその小さな手を引き離し。

「御免なさいねぇー、絆サン。また遊んで貰っちゃって。」
「いえ…、僕も結構楽しいですから…。」

母親に連れられつつ、絆に「またねー」と声を掛ける、そんな彼に絆も優しい笑顔で手を振る。

「可愛いね。」
「あれ、杏って子供好きだったっけ?」
「いや、あの子じゃなくてさっきの君が可愛いと…、少年と戯れる絆、はぁーキュンキュンくるわ。」
「……。」

落ち着きを取り戻した病室で、会話をする私達、すると彼からこんな話が。

「地獄に仏、荒野に咲く一輪の花、拓海クンはそんな感じかな。」
「退屈な入院生活に僅かな楽しみが出来て良かったね。」
「まぁね、あの子には幸せになって欲しいな、早く完治して。」
「人の事より、まず自分でしょ?」
「あはは、今はもっと楽しいな、こうして君も来てくれてさ。」
「うん、何だか最近は休日が待ちどうしくて仕方がないね。」
「出来れば毎日来て欲しいな。」
「うふふ、私も出来たらそうしたい。」

お見舞いをする為に小樽まで通う日々、ついこないだまで彼は死んでもう二度と会えないと苦しんでいた日々が嘘のようだ、私は彼と会う度学校や家の話を沢山した、というか話題を仕入れて、今度あったらこの話をしよう、そう思う時が何だか一番幸せ。

「実はね、適合者…見つかったかも知れないんだ。」
「っ!?」

槍で心臓を貫くような衝撃を受ける。何だ、行き成り。

適合者が見つかった?


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