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紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

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紅館番外編〜始まり〜-2

審問所は街から少し離れた場所にある。
石造りの塀の中ではいつも苦痛の悲鳴が聴こえてくる。
(ここもあんまり好きじゃないんだけどな………)
暇潰しなんて軽い理由でこの仕事を受けたことを後悔した。

『おぉ、王兄陛下、よくぞお越しくださいました。』
審問所の神官が私を出迎えた。
禿げた中年の男はわざとらしい位に手を打って喜びを表している。
『………で?』
『あぁ、そうでしたな。
魔女は初審での改宗を拒みましたので、今は浄化の作業に入っています。』
浄化などと言っているが、実際は改宗させるために苦痛を与える………拷問であった。
『魔女? 女なのかい?』
『おや? お知りでなかったのですか?
伝令め、伝え忘れおったな………』
女性相手となると、私の気分はさらに落ちた。
だが、一度受けると言ってしまったのだから最後まで付き合わなくてはならないのがこの仕事だ。

生(改宗)か死(殉教)か………

バシッ!
石造りの部屋に乾いた音が響く。
覗き窓から見ている私の目の前では部屋の中央に天井からつり下げられた女が拷問官の鞭を受けていた。
女の服は無く、全裸であった。
しかしその格好は官能的とは程遠い。 白い肌にはあちこちに痛々しい鞭の赤い線が走っている。
バシッ!
『くあぅぅ………うぅぅ………』
鞭が振るわれるたび、女は押し殺した声をあげる。
『エルフ!?』
拷問官がうつ向いた女の髪を掴んで上を向かせると髪の間からエルフの耳が見えた。
『馬鹿なエルフだね。
邪教なんて信じなければ長生き出来るというのに。』
窓から見るのを止め、神官に任せて他の部屋を見て回ることにした。
だが、どの部屋も例外無く拷問が行われていた。
正直拷問なんて見ていて面白いわけがない。
『嫌な仕事引き受けちゃったな。』
ふと、牢獄の前を通ると何やら懐かしい顔があった。
『………キシン?』
『ん………ウェザ?』
牢獄の看守の服を着たキシンがそこにいた。
『キシン! 君、ここで何をしているだい!?』
『見ての通り、暇な看守。』
キシンは至って普通に言った。
『看守って………大戦の英雄がこんなところで。』
『いやいや、英雄英雄って騒がれて仕事漬けになるのが嫌だからここで看守してるんだ。
ここなら暇だからな。』
だが、よりによって審問所で看守をやらなくても良いと思うが………
『こんなところで看守やってて気が重くならないかい?』
『ん、俺には俺のやり方があるんだよ。』
フフフと微笑むキシンは、昔のままだった。
かつて大陸の統一を目指して戦った六人の仲間の一人がキシン将軍だった。
『ん……新入りが帰ってきた………』
二人の拷問官に引きずられて、さっきのエルフが牢獄にやって来た。
キシンは独房を一つ開けると彼女はそこに投げ入れられる。
『そういえば、ウェザはなんでここに?』
『あのエルフの審問担当で。』
それを聞くとキシンは意外そうな顔をした。
『お前さんがねぇ〜』
『女だと知ってたら受けてないよ。』
だろうな、とキシンが頷く。
『ところで、あのエルフに話をしたいんだけど。』
『どーぞ、ここは俺の管轄だから好きかってにしてくれ。』
場に似合わない陽気な笑い声をあげるキシンに礼を言い、私はエルフの独房に入った。


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