覚醒-6
床に額をピタッとつける程に必死で謝る翔太に奈緒は言った。
「土下座なんてしないで?」
奈緒はしゃがみこみ翔太の肩に優しく手を当て体を起こす。
「ごめんなさい!!」
未だ謝り続ける翔太の顔を見つめる奈緒。
「もう謝らないで…。」
「で、でも…」
涙目の翔太は物凄く不細工だった。見ているだけで哀れになりそうな姿に笑みを浮かべる奈緒。
「怒ってないし、誰にも言わないわ?」
「えっ…!」
意外な言葉にキョトンとする。
「他の人には全然迷惑はかけてないわ?私が何とも思わなければ済む事でしょ?怯える必要なんて全然ないからね。」
「えっ…?」
翔太は全く理解出来なかった。何故奈緒が怒っていないのかが全く理解できなかった。
「これから私がする事を秘密にしておいてくれれば、誰にもこの事は言わないわ?本当の私の姿を安本君だけの秘密にしておいてくれれば、ね?」
「本当の部長の姿って…」
「すぐに分かるわ…?ねぇ安本君、約束守れる?」
あまりにも妖艶過ぎる奈緒の姿に首を横に振る選択は全く無かった。
「は、はい…」
翔太は何かに取り憑かれたかのようにそう答えた。
「うん。約束よ?」
次の瞬間、信じられない事が起きた。
「えっ…?」
一瞬時間が止まったかのように思った。何と奈緒の唇が自分の唇に重なっているのだ。頭の中が混乱する翔太は体が動かない。体の中身が全て吸い取られてしまったかのような錯覚に陥った。
唇を離し間近に奈緒の顔がある。笑みを含んだ奈緒の瞳に翔太は体の底から身震いが起こる程の何かを感じたのであった。