同じ名前の彼女B-1
あれから俺は休み時間によく屋上に行くようになった。屋上には彼女と加藤が必ずいた。中学時代の俺は自分で言うのもなんだが不良だった。しかし成績はそれなりで有名進学校に入るのも難ではなかった。仲間たちはみんなレベルの低い高校に進路を決定する中、加藤は俺に言った。『俺、悠と同じ高校目指すよ。悠の邪魔はしないから。』加藤はそれから必死に勉強した。もともと勉強はやれば出来るほうだった加藤は成績も良かった為か俺と同じ高校に合格した。俺はそんな加藤がうっとうしく思え高校の入学式の前日、加藤に縁を切ると告げた。そんな最低な俺を屋上に行くと加藤は快く迎えいれてくれた。
そんなある日、彼女はいきなり俺の胸ぐらを掴んできた。『あんた何で今更、加藤と寄り添おうとしてるん?』目には涙が浮かんでいた。『縁切るなんて言っっといて…加藤のこと何だと思ってるん?』彼女の頬に涙が伝った。『最低だよな。』そう言うと彼女は手を離し『加藤になんか言うことあるんとちゃう?』と呟き教室を出ていった。そう、俺は加藤に謝るべきなんだ。
『加藤。』その日の放課後、俺は屋上に行った。加藤に謝るために。『どした?』加藤はいつものように俺を出迎えた。俺はなかなか謝れずに時間だけが過ぎた。『最近、中学ん時に戻った気がしないか?』話しを切り出したのは加藤だった。『あぁ…。』それしか答えなかった。『ところで進路は決めた?』加藤は話しをかえた。『一応、〇大志望。』そう言うと『それじゃ俺は今更どんなに頑張っても無理だな。安心しろ。大学まではついてかないから。』そう笑顔で加藤は言った。『お前はどうすんの?』そう聞くと『俺は専門行くよ。やっと将来見えてきたんだ。』と加藤は答えた。『将来か…。俺はまだ見てねぇや。』『だから大学行くんだろ?』そう言い俺の肩を叩いて加藤は帰ろうとした。帰ろうとする加藤を呼びとめ俺は『あの時は…すまなかった。』と頭を下げた。『わかってるよ…お前の気持ちは誰よりもわかってるつもり。』そう言い笑顔で加藤は帰っていった。俺は自分を理解してくれる友人に酷いことを言ったあの頃の自分に腹が立った。しばらく屋上でボーっとしていると雨が降ってきた。その秋雨は彼女の涙のように静かに降った。(続く)