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同じ名前の彼女
【片思い 恋愛小説】

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同じ名前の彼女A-1

彼女が転入してきて三ヶ月がたとうとしていた。彼女は相変わらずクラスに、いや学校に馴染もうとせず授業もたまに出ては屋上へ行く、そんな生活を送っていた。もうすぐ学校は夏休みに入る頃だった。数学の授業が終わり彼女はまた屋上へ向かった。黒板には彼女の書いた数字にデカデカと赤いチョークで丸がつけられていた。それをさっさと消そうとする女に『待って!まだ写してるから。』と言う男。彼女は勉強してなさそうに見えるのになぜか指されると確実に正確な答えを出す。お洒落も恋愛も全て捨て勉強に全てを捧げてきたクラスの女たちは彼女を認めようとはしなかった。『また屋上?加藤くんと何してんだかね。』その頃には彼女と加藤の噂は学校中に広まっていた。『こないだ早川さんと加藤くんがホテルに入ってくの見ちゃった。』と一人の女が言うと『私、早川さんが加藤くんじゃない男とホテルから出てくるのを見たわ。』『私も!』『うわ〜ぁ。汚い。』とたちまち彼女の陰口をクラス中が言うようになる。俺はそんな所にいたくなくて教室を出た。そして足は勝手に屋上へ向かっていた。
屋上へ出る扉を開けるとそこには彼女と加藤がタバコを吸っていた。『悠!こっち来いよ。』加藤に呼ばれ俺は二人のもとへ行った。『タバコくれ…。』俺が言うと『おっ!三年に及ぶ長い禁煙生活もついに解禁か?』と言いつつ加藤はタバコを差し出した。タバコをくわえると彼女がそっとジッポで火をつけてくれた。『デマ流されてるらしいじゃん、悠。』と加藤が言い彼女と俺は同時に顔を上げた。『そうだ、お前ら同じ名前なんだよな。高瀬のほうはもう中学時代から悠だから悠のままで早川のほうのあだ名を考えるとしよう。』という加藤の提案に俺は『いいよ。二人ん時は名前のが良いだろ?変なあだ名だったらセックスの時、萎えるだろ。』と作り笑いで言った。『はぁ?』と言い彼女は『ウチがこいつと?それがデマやって。』と言った。加藤は笑いながら『まさか悠が信じてるとはな。』と言ったが俺はあの時、二人がキスしようとした瞬間を見たんだ。まぁ二人は気付いてないだろうが。
そんなこんなで、彼女のあだ名は"関西"に決まった。ネームセンスの欠片もないと彼女は言ったがそう言いつつも彼女は笑顔だった。クラスでは決して見せない笑顔はとても優しかった。
教室には彼女と一緒に戻った。その時、いろんな男とホテルに行ってるというデマが流れてる彼女に言うと『それはデマやないで…。』と彼女は言った。それを聞き、あの時と同じ胸が締め付けられるような感覚に陥った。『始めに言ったやろ?見た目通りやでって。』そう言い彼女は笑った。しかし、それはあの時のような笑顔とは違い、少し寂しそうだった。彼女の言う見た目とはどのようなことなのか俺にはわからなかった。それは外では蝉が忙しく鳴く暑い夏の日だった。(続く)


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