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揺らぐ
【SM 官能小説】

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揺らぐ-1

キンというような音がどこからか微かに聞こえる。

遠く聞こえる歯科治療の音にも似ているし、真夜中に耳を澄ました時に響く蛍光灯のざわめきにも似ていた。

視覚は閉ざされて何も見えず、私からしてみればすべては闇の中で遂行されている。
どのくらいの間だろうか、私はその闇の中で少し眠っていたみたいで、またあの嫌な夢を繰り返しみていた。

真っ暗な…ただ暗いだけの画面に四角い輪郭が揺れている。
それに目を凝らして確かめようとすると、決まって神経がざわっ…と高ぶり気分が悪くなってしまうのだ。

「聞こえますか?」

「…はい。」

不意に投げかけられた言葉に口が渇いて、すぐには返事がでなかった。

「ご気分はどうですか?」

何と答えてよいのか分からない。
事前に目隠しをされたまま、ここに誘致された私は複数の男の手によって体を縛りあげられていた。
素肌の上を縦横無尽に絡み合うロープはぎしぎしと音を立て、肌に食い込んだ。
手は後ろに脚は前にちょうど胡座をかくように足を重ね合わせて固定されているようだった。

お尻の一部は微かに床についているが、ロープは身体のあらゆる箇所から天井に向けて真っ直ぐに伸びきり、マリオネットのようにほとんど宙吊りにされてるも同然といった状態だろう。

私は目隠しの中で見えない自分の状態をひたすら探ってみる。
ただ、それらの緊縛は絶妙なバランスで施されており、宙吊りにされたとて不均等な圧迫感を感じさせなかった。

それでも意図的に少しお尻を浮かせると体は揺れて、その体重にズシリと締め付けられる。

頭の中でF1レーサーなどがシートに括りつけられて感じる重力って、きっとこんな感じではないだろうか?…
などと思っていたりしたのだった。

「ご気分はどうですか?」

「大丈夫です。」

また、同じ質問が繰り返された時、私は何やら激しい苛立ちを感じた。
答えを見いだせない事に関してか、あるいは適当に吐き出してしまった自分の言葉に対してだか…



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