揺らぐ-2
「大丈夫」はこの場合、不適切な感じが否めなかった。
「痛みはありますか?」
痛み?…痛みはないような感じだった。
がんじからめに締め付けるロープに感覚が慣れてしまったのか、あるいは麻痺しているのだろう。
むしろ、目の粗いネットで体中をすっぽり包み込まれているような感覚がある。
「痛く…ないです。」
今度は少し考えて、丁寧に受け答えをしたが私は明らかに緊張を隠せない。
「それでは、少し痛みを与えます。
耐えられなくなれば、どうぞ言ってください。」
ピシッ!っと背中に電気が走った。
肩の下…肩甲骨のあたりだったか、ロープにあたって露出した部分だけに痛みを覚えた。
ピシッ!ピシッ!
「あぁうっ…」
この手の趣向で使うような鞭ではなく、何かもっと細い枝みたいなのがぴゅんっ…と唸って背中に打ち付ける音を聞いた。
「痛みますか?」
「ぅ…い…え…」
きっと、耳や指先に当てられるとたまらなく痛いだろうと思い。
私は無意識のうちに顔を背けて背中を突き出す姿勢をとっていた。
ロープがぎしりと軋みをあげて、体は宙に浮く。
痛みはないというわけでもない。
染み入るようなひりひりとした感覚が熱を発するように感じるけど、耐え難いほどではなかった。
「これから、もう少しばかり強い刺激を与えます。
痛みは肉体のものです。心のものとは違う所にあるのです。」
ピシッ!
「んっ!…」
「強くする」と言われれば、確かに痛いように感じたが、どちらかと言えば今度は冷たい痺れが背中に疾った。
二つ…三つと続く痛みは背中ばかりかお尻にまで飛んでくる。