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THE 変人
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初夜-7

 本当なら今頃死んでいたはずだ。しかし自分は生きている。強い決意の元、崖から飛び降りたのだ。生きている事に戸惑いは隠せない。
 「もう見るはずもなかった未来。もっと投げやりになれると思ったのにな。」
自分なんてどうなってもいいと思った。泊まる場所さえ与えてくれるのなら別に誰に抱かれようが平気だと思っていた。何をされても平気だと思っていた。しかし実際はは裸を見られれば恥ずかしいし、まして性器を見られたり匂いを嗅がれたり舐められたりするのは物凄く恥ずかしかった。もし変な男につかまっていたらと思うとゾッとした。
 「やっぱ自分を捨てきるのは難しいんだな…。」
そう呟いた。死ねなかった以上、自分は自分として生きていくしかないのだな…そう思った。
 しかし海斗との出会いは瀬奈にとって運命に思えた。海斗といると自分がずっと求めていた安らぎを得られる。海斗とこれからずっと生きて行けたなら死にきれなかった事が幸運に感じるだろう。むしろ生きていてよかった…、そう思わせてくれそうな気がした。
 「あなたは私にとって運命の人なの?」
瀬奈は鼾をかいて寝ている海斗の頬をつついてみた。
 「んんん…。グゴーッッ!!」
物凄い鼾に吹き出してしまった。そんな海斗の寝顔をじっと見ていた瀬奈だった。
 「私はずっとここで海斗と暮らしたい…。海斗に救われたのは偶然じゃない。神様が私と海斗を引き合わせてくれたんだわ、きっと…。この人のそばに居られれば私はきっと生きてる意味を得られる。本当の自分でいられる…きっと…。」
苦しかった人生を振り返り涙を流す瀬奈。苦しくて苦しくて仕方なかった。いつでも死にたかった。そんな人生を終わりに出来るチャンスを今までずっと求めていた。しかし今は違う。瀬奈はようやく死以外に苦しかった自分の人生を終わりにしてくれるものに出会えた気がした。


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