Purple wedding-8
――――ガチャッ・・・・
「 !!! 」
鏡の前に座っているルールーから見て、背後のドアの動きは鏡越しに確認できることになる。
しかし開く筈のないドアがノックもなしに開き、
外から夫以外の男・キッパが滑り込むようにして室内に入ってきた時には、
流石のルールーも驚きをもって背後を振り返らずにはいられなかった。
「キッパ!!!」
「・・・・・・」
思わず立ち上がってしまったルールーの眼には、
結婚式に参列する為にブラックスーツにシルバーグレイのネクタイを着こなしたキッパには今まで感じたことのないような真剣さがひしひしと伝わってきた。
無言のまま背中の後ろでドアを閉め鍵までかける。
そしてルールー自身はまだ意識していないが、
彼女が着替える前の格好――――黒いレースのブラジャー、ショーツ、ガーターベルトにストッキングのみだったことも、知らず知らずキッパの感情を昂らせることになったのだ。
「綺麗だよルールー。凄く綺麗だ・・・・」
本来なら新郎や家族が最初に発する賛辞が、予想外の闖入者の口から漏れたことにルールーは一瞬背筋に冷たいものが走ったような心地になった。
それに対してコメントできないルールーに構わず、
キッパはゆっくり足を踏み出しルールーとの距離を縮めようとする。
彼の行動や雰囲気、そして切迫したような表情から、ルールーは“彼の目的”を本能的に察した。
「近づかないで、人を呼ぶわよ!!!」
「構わないよ、そんなこと」
ここでキッパの眼がギラリと異様な光を放つ。
それはルールー自身今まで見たことない異様さと荒々しさを体現した光だった。
その空気に思わずルールーは息を飲む。既に自分が下着しか身に付けていないことすら忘れてしまっていた。