Purple wedding-2
「そういえば、今日は・・・・・」
ふとルールーは後ろに向き直り、枕元に置かれた目覚まし時計の針と日付を確認する。
夜の9時。そして――――
「明日が結婚記念日に、なるのね・・・・・」
自然に漏れた呟きに合わせ、ルールーの右手が無意識のうちに胸元に伸びる。
ちなみに今のルールーの出で立ちは、ウェーブがかった黒髪を腰付近にまで垂らし、
紫色で薄手の絹のスリットが彼女の白く豊満な裸体をすっぽりと包み込んでいる。
薄い生地のせいか、彼女の下腹部を覆う黒いショーツが外から見ても分かる。
薄い布地だけでは、ひんやりした室内の空気をそのまま感じてしまうが、今のルールーには全く気にならないことだった。
――――彼女の右掌がスリットの布地越しに両乳房の間の箇所に添えられた時、
ルールーは静かに瞼を閉じ改めて半年近く会っていない“夫ワッカとの結婚式”の記憶に想いを巡らせていた。
『――――ルールーさん。あなたはワッカさんと結婚し、夫としようとしています。あなたは、この結婚を神の導きによるものだと受け取り、
その教えに従って、妻としての分を果たし、
常に夫を愛し、敬い、慰め、助けて変わることなく、その健やかなるときも、病めるときも、富めるときも、貧しきときも、
死が二人を分かつときまで、命の日の続く限り、
あなたの夫に対して、堅く節操を守ることを約束しますか?』
今から2年半前、
ビサイド島の教会において神父を前にして執り行われたワッカとの結婚式。
そこで神父が問いかけてきた言葉がルールーの脳裏に甦ってくる。
その時黒いウェデイングドレスに身を包んだルールーは、はっきり『誓います』と誓約した筈だった。
結果的に彼女は自分の意志かどうかに関わらず、その誓いを破ることになってしまうのだが。