拾われて飼われました 後編-12
ガルシーダで人々かコボルトとなる変化が起きた頃、ランズベルの村の村長の家に一人の少女が監禁されていた。
村長のマーシュは初老の男性だが、自室で全裸で仁王立ちになりしゃがんでいる少女の頭部を両手でつかんで腰を揺すっていた。
「……うくっ、むぅ、んぐっ、んっ……げほっ!」
少女が涙目で唇の端からマーシュの射精した白濁した精液をこぼしながらむせていた。
マーシュの勃起した性器は口から吐き出されても脈打ち続け、少女の前髪や頬に生温い精液を放った。
少女がマーシュを見上げると、マーシュは「さあ、もう一度しゃぶれ」と言って鼻先に勃起の先端を突き出した。
少女はあごが疲れきっているが唇を開いて、マーシュのものを再び口に含んだ。
「そうだ、舌を使って裏側を舐めるんだ」
少女は目を閉じて、勃起の根元を軽く握り、口から離さないように気づかいながら舌を絡ませた。
少女の口の中で唾液が溢れて、マーシュが腰を小刻みに揺らしたり、ゆっくりと大きく喉奥へと突き出すと湿った卑猥な音が響いた。
ぬちゅ、くちゅっ、しゅぷっ……。
マーシュが熱い吐息と鼻息をもらしながら興奮して少女の華奢な体つきを見下ろしている。
マーシュが少女の耳や丸い肩を指先でふれると、少女はビクッと怯えたように身を震わせる。
少女の背中は小さな白い鱗が広がっている。腹部や腰のあたりもまた同様である。その顔や耳、うなじや乳房、肩から指先、丸い尻や脚は鱗に覆われていない柔肌である。
白蛇の鱗のコルセットをつけたような裸身であった。
地球上に最初の爬虫類が出現したのは石炭紀、今からおよそ三億年前のことだった。過酷な進化の競争を経て、一部は体格も大きく、より知的に、そしてついには直立歩行するまでになった。およそ二億七千五百万年前の二畳紀の時代に、初期の蛇人が出現した。
グレート・オールド・ワンであるイグは全ての蛇の父と言われており、それゆえに蛇人間達は当初よりイグを崇めていた。
伝説では、この初期の蛇人たちが、大陸パンゲアの中央部近くに位置する肥沃な土地ヴァルーシアに彼らにとっての最初の帝国を築いたという。この帝国は魔術と錬金術がその根本を成しており、最盛期にはこの古生代の世界の大半を支配していただろうことは想像に難くない。いくつもの伝説の中で真実がどれほど存在するのか言明することは難しい。当時地球に居住していた古のものやイスの偉大なる種族が残した記録にはこの初期の蛇人に関することも僅かながら存在する。いずれにせよ恐竜たちが台頭してきた二億二千五百万年前に、この最初の帝国は滅亡した。
ヴァルーシアの古代文明が滅びたとはいえ、多くの蛇人間達は生き延びた。彼らは地下に逃げ、世界が再度住みよい状態になるまで隠れ潜んだ。蛇人間の築いた地下文明の中でも最も偉大なものは現在の北アメリカの地下深くに位置するヨスである。少なくとも二億年の間、蛇人間達はそこに暮らしていた。彼らの文明は隆盛と没落を繰り返した。
五百万年前、ヨス文明はかつて無いほどの隆盛を見た。好奇心旺盛な探険家達が黒く輝くン・カイへの道を発見した時、ヨスのその後の運命の選択があった。彼らはツァトゥグアを崇拝する祭壇を発見する。この土神は驚異的な力と知性を持っており、多くの蛇人たちがイグからその崇拝の対象を代えていった。
イグはおのれを見捨てた蛇人間達を快くは思わず、それゆえに彼らに呪いをかけた。
ヨスの蛇人間達は自らの発声能力とその四肢、そして知性を失ってしまった。彼らは遥か昔の姿である蛇へと変えられてしまったのだ。
イグの忠実な崇拝者はその呪いを逃れ得た。彼らは北方の地ハイパーボリアへと旅をし、ヴーアミタドレス山の近くに住まった。
イグを崇拝し続けた蛇人たちはヴーアミタドレスの下で、蛇人間の偉大なる文明は繁栄を続けた。
この頃から彼らは純粋な知性だけの存在の如き酷薄な生物へと変貌していった。彼らにはモラルなど存在せず、彼らを統べる唯一の法は常に満たされるべきおのれの好奇心であった。ハイパーボリアの蛇人たちはホムンクルスの生成にも着手していた。およそ三百万年前よりハイパーボリアの地上を支配していたヴーアミ族も彼らの作であると言われている。しかしヴーアミ族が土神ツァトゥグァと特別な協力関係を築いていたことからも、過去の痕跡は残っていたようだ。
ハイパーボリアの蛇人間達のその運命の正確なところは未知のままだ。彼らが作り上げたヴーアミ族も百七十万年前にイタカの冷気により脇へと押しやられてしまった。人間たちは百万年前にハイパーボリアへと辿り着き、新しい文明を作り上げた。七十五万年前には彼らもまた去ってしまう。現在ではハイパーボリアの名残はグリーンランドに見ることができる。
氷河期の訪れと共にハイパーボーリアの地の文明は滅び、全ては氷に閉ざされた。
蛇人たちが移住した五百万年前の時点では、状況は地表でもまた変化があった。最初の帝国を滅ぼした恐竜はその姿を消して久しかった。
そして哺乳類が台頭していた。またアフリカでは人類の祖先である最初のヒト科生物が進化を遂げていた。
ハイパーボリアから逃れた蛇人たちは海神クトゥルフによって新しく隆起した土地レムリアに王国を築こうとした。
レムリアを人類発祥の地であるという学説を唱える者やムー大陸と同一視する学説もあるが「古代インド洋には各地を結ぶ巨大な大陸があったのではないか」という仮説のみで立証にはいたっていない。
だが不幸にも蛇人たちは新種である人類との闘争に巻き込まれることとなる。
紀元前五十万年にレムリアにおける蛇人間達の文明は崩壊した。
さらに南へと逃げ延びた蛇人間達はトゥーレ大陸へと到達した。ここで彼らはついに帝国を再建することとなる。彼らは第二帝国と名づけ、その帝国は後に伝説となった地ヴァルーシアの中央部に位置した。戦いは幾度も繰り返されたが、最終的にはトゥーレ大陸の人類の多くは蛇人たちの奴隷階級とされた。