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バルディス魔淫伝
【ファンタジー 官能小説】

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拾われて飼われました 後編-10

獣人族の領主ジェフ・ボレル。
元海賊王のギル・セイバーはシェリー・ボレルと結婚してカラム地方を統治する領主となる。
宰相ルシャード・カーマイルと皇子アルフェスは大将軍として女帝となったエルシーヌを補佐する帝国の重鎮となった。
ラーダとスーラは聖騎士団の総長と副長として就任。
メリル・ストリは賢者の称号を与えられて、無名祭祀書を所持する聖騎士団の参謀官になった。
セリアーニャは大神官となった。
大アルリギス王国の史書にはそれらの出来事が簡潔に記載されている。
ガルシーダのディルバスが起こした事件から、わずか二年間の間で、大アルリギス王国の世代交代は行われたのである。
それだけ異世界からの脅威に対抗できる人材が大アルリギス王国には不足していた、ともいえる。
ガーヴィこと皇子アルフェスはディルバスの事件後、半年ほど王都クラウガルドに滞在していたが、再び旅立った。その旅にさやかは同行した。
ディルバスの脅威は過去に大規模や厄災を海神クトゥルフと火神クトゥグアにより引き起こしたり、地方の領地を邪教の組織の拠点としようとしたことだけでは終わっていなかったのである。
過去に石化の呪いと障気によって人々の理性を崩壊させた。さやかの秘められた力の脅威によって、前世では魔道師ルシャードと王女だけが生き残った。
無名祭祀書がルシャードの守護神であるハスターの力で、二人を厄災の時代からかなりあとの時代へ逃がしたからである。
無名祭祀書は黒の書とも呼ばれる。
初版のドイツ語版が六部だが、オリジナルは発禁処分されていて現存していない。
海賊版で不完全な翻訳のものと、翻訳は正確だが呪文や術式などを明示しなかったものの二種類が出回っている。ドイツの神秘学者フリードリッヒ・ウィルヘム・フォン・ユンツトによって十九世紀に書かれた。著者であるフォン・ユンツトが世界中を回って見聞した、クトゥルフ、ヨグ=ソトース、ツァトゥグァ、ガタノトーア、シュブ=ニグラス、イグといった恐るべき神々にまつわる古代信仰、秘密の宗派、さまざまな伝承、忘れられた言語などについて記されている。
ほとんどの部分は曖昧に仄めかされたうわごとのように意味をなしていない。
本書が出版された翌年(1840年)に、続篇と思われるものを書いている途中で変死。
施錠され、閂で閉めきられた部屋の中で、ひき裂かれた未発表草稿とともに、喉にかぎ爪の跡が残った絞殺死体となって発見された。
またその後、彼の友人アレクシス・ラドーによってこの破られた草稿が復元されたが、ラドーは草稿を読み終えた後、即これを焼却し、自らの喉をカミソリでかき切って自殺した。
アトラク=ナクアとの戦いで魔道師ルシャードと王女エルフィーヌを逃がした魔道書はヨグ=ソトースの禁忌をおかしたことで、ディルバスにより復元されるまでは失われていた。
さやかのいた世界の過去で、無名祭祀書は書かれては不完全なままになっていたのは理由がある。
アヴドゥル・アルハザード。
ネクロノミコンの原書「アル・アジフ」を記した人物と伝えられている。
イスラム教の教祖ムハンマドに三度挑戦するが敗れ、投獄されたが脱獄した。しかし、白昼の街中で見えざる魔物に全身を引き裂かれた。だが、奇怪であるのは残された遺体は目玉だけだったと伝えられているアラブの魔道師である。
獄中で同じ牢の者たちを殺されていく。アルハザードだけはわざと死への恐怖を感じさせるために生かされていた。その恐怖の中で「アル・アジフ」を書き上げることを命じられた。だが「アル・アジフ」とは別に牢獄の壁に血文字で書かれたものが残されていた。牢獄で廃人となっていたアルハザードは放逐された。
処刑して呪われるのを警戒されたのである。
放逐された肉体は贄にされた。ムハンマドに挑むために召喚した魔物への代償に自らの肉体を捧げたのだ。アルハザードの魂は異界に連れ去られてはいない。壁に血文字で書かれたものに封じ込められていた。
それを「アル・アジフ」とは別の秘密があるにちがいないと興味本位で書き写した者がいた。
アルハザードはそうしてムハンマドの結界から不完全なものとしてだが、脱出に成功した。
不完全な写本は異世界へ渡り、それは口承で伝えられるのみとなった。その一部がフォン・ユンツトによって書かれた。そのため呪われてしまった。
無名祭祀書となったアルハザードはハスターの加護を受けている少年を禁忌と知りながらも、闇の女神シェブ=ニグラスへ祈祷して強引に刻を渡らせた。書物となったアルハザードは、ヨグ=ソトースに認められた者ではない。
ディルバスはアトラク=ナクアの力で王となるべく世界を渡ったが、その知識は皮肉にもネクロノミコンと無名祭祀書を合わせて書き上げられた魔道書によって得たものであった。
ディルバスが焼却されて、アルハザードはやっと人の意識を取り戻した。
熾烈な戦いであった。アルハザードが逃がした二人以外のアトラク=ナクアの化身に挑んだ海賊王ギル・セイバーを含めた仲間たちは全滅した。
アトラク=ナクアの化身を祓ったガーヴィの前世であるホムンクルスの男はアトラク=ナクアの化身が消えると同時に息絶えていた。アトラク=ナクアの化身を滅ぼすためにニャルラトホテプの力を解放したことの代償であった。
さやかをディルバスはアトラク=ナクアの贄に捧げて
いにしえの神の力を使った代償としようとした。
自らの肉体や命を賭して魔道を使おうとしたディルバスは、アルハザードのような魔道師の誇りや覚悟など微塵もない。
ニャルラトホテプの脅威は元々あったが、さらにアトラク=ナクアの脅威を、ディルバスはこの世界に残したのである。
この世界の者を贄に捧げても自分の身代わりにはできないと、ディルバスが本来はいた世界から、さやかを
召喚した。
さやかをディルバスが選んだわけではない。ディルバスは誰でもよかった。
海神クトゥルフはアトラク=ナクアと敵対している。


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