大-6
「山崎?受付のあんな可愛い井上さんがなんで今フリーなのか知ってる?」
「・・・・・いえ」
「山崎の気持ちがだだ漏れで、他の男がアプローチを諦めてるだけなんだけど?」
「はぁ?」
「会社の噂、意外とすごいよ?」
「こわっ」
「だろ?だから早くモノにしちゃえよ」
全く。野口さんと山田さんはあんなに派手に彼女と注目を浴びるような事を起こして。
楠さんは俺が入社した時には結婚してるし。
ニヤニヤ笑っている3人が怖いわ!
その日、黙々と仕事をして
今まで早く帰っていた分を取り戻して。
5時に3人は「俺たち6人で食事だから」と
早々に帰って行った。
野口さんの彼女の総務の谷城さんと
山田さんの彼女の経理の新田さんと
楠さんの奥さんは仲が良くて良く6人で食事をするらしい。
俺も帰るか。
8時を過ぎたころ、帰り支度をして
途中でコンビニ弁当を買って。
マンションまで来たときに柱に井上が寄り掛かっていた。
「井上?」
「山崎・・・・」
俺を見たとたん、ほっとしたような表情になった井上は
次の瞬間、必死に俺に抱きついていた―――