夜のサービス-2
いきり立つ下半身を何とか収め風呂から上がる海斗。ふとソファーに座る瀬奈を見ると神妙な顔つきで床を一点に見つめている姿を目にした。
(明るく振る舞っていても、あいつは自殺未遂したばかりなんだもんな。あんな高い崖から飛び降りるなんて相当なもんだ。)
海斗は瀬奈の傷を感じた。海斗の気配を感じるとすぐに笑顔を作る瀬奈。
「明日は一緒に入ろうね!」
「い、いいよ…」
「海斗、見かけによらず恥ずかしがり屋なんだね。」
「そ、そんな事ないよ。釣りキチなめんなよ??」
「釣りキチ関係ないし!」
「関係あるさ!だってよ、場合によっては釣り禁止の場所に命がけで入り転落死しそうになりながらも…」
海斗は論点のズレた話を必死で続けた。途中から瀬奈も一体何が言いたいのか全く分からなくなってきたが熱弁する海斗の話を時折頷きながら真面目に聞いてあげていた。
「…てな訳で俺はいつでもどんな時でも実に堂々とした男なんだよ!」
瀬奈が思うに支離滅裂な話を、てな訳で、で都合良く終結させた話を終え、確かに胸を張り堂々としている海斗に言う。
「てな訳で私とお風呂入るのも堂々としてるって事だよね?」
「…まぁ、そうなる。」
少し間が開いたのには可笑しくなった瀬奈だが敢えて突っ込まなかった。
「でも何だな…もてない独身オヤジには刺激強いな、それ…」
「えっ?普通だよ。やっぱ海斗、たまってるんだね!」
そう言って前屈みになり谷間をチラつかせ笑う。
「…大人をからかうな!」
「あれ?顔真っ赤だよ??興奮した?」
「してねーし!」
と言いながら顔を背ける。
「でも、何の色気もない女といるより、少し刺激的な女がいた方がいいでしょ?そう思わない??」
「えっ?ま、まぁそれも一理あるけどな…。」
「でしょ?そのうち慣れるよ。ほら?触りたきゃ触ってもいいんだよ?」
海斗に接近し胸を寄せる。
「ごくっ…」
「ほら♪」
「…」
海斗の手が反応する。しかしすぐに我に返る海斗。
「だー!ダメだダメだ!」
触りたいエロ心と自制心の狭間でもがく海斗のが微笑ましい。瀬奈はからかうのをやめた。そしてソファーに座る。
「ねぇ海斗…?」
「ん?」
瀬奈の顔は真面目になっていた。
「さっきはごめんなさい。」
「何がだ?」
「助けて貰った時、どうして助けたんだなんて言って…。」
急に真面目な話になり戸惑う海斗。
「あんな状況だ。仕方ないよ。気にしてないさ。」
大人の対応を見せた。本音はあの時、本気でもう一度海に投げ込んでやろうと思っていた事は内緒にしてみた。
「昼間自殺未遂しておいて心変わりが早いと思われるかもしれないけど、今は明日の事を考えられる。あのまま海に漂流していたらきっとそのまま死ぬ道を選んでた。でも海斗に助けて貰ったおかげでもう少し生きて見たいと思えた。海斗と話してると今まで苦しんでいた事を忘れられるの。海斗って不思議な人。私、海斗といると凄く居心地がいい。私を救ってくれるような気がして…。」
そう言って俯く瀬奈だった。