逃亡-38
サングラスの男と警備員達は港を駆け抜け、桟橋に停泊していた船に乗り込んだ。
そして、船に乗り込むや否や、船員達を次々に射殺していった。
「ここにいるのは、PFFTや人身売買組織の連中だ。全員射殺して構わん!」
サングラスの男が叫んでいる。
「なんだ?どうしたんだ?」
銃声と叫び声を聞いて、船室から東條が飛び出してきた。そして、甲板で繰り広げられている惨劇に驚愕の表情を浮かべる。
「…、く、くそう…、裏切ったな、あのタヌキ…」
全てを悟った時、サングラスの男の銃が東條の胸を打ち抜いた。
下腹部にジンジンと痛みが走り、額には汗が滲んでくる。必死で耐えてきた瑞紀の我慢もそろそろ限界だった。
「そこで漏らしても、いいのことよ。」
「でも、そうすると、お漏らしした上で、一晩か二晩寝なきゃならなくなるけどな。」
王と巨漢の言葉が決め手になった。このまま我慢していても、床に漏らしてしまうのは時間の問題だった。
「もうだめぇ…」
とうとう、瑞紀は洗面器を跨いだ。とたんに、緊張の糸が切れて、秘溝の一点からチョロチョロと黄色い液体が溢れ出る。
「いやぁっ!見ちゃ、いやぁ!」
しかし、男達は尿を排泄する陰裂をじっと見つめている。
放出される小便は、飛沫をとばしながら見事な放物線を描き、あっという間にジョロジョロと盛大な音を立てて洗面器に貯まっていった。
「こりゃあ、いい眺めだ。」
「へへへ…」
巨漢が卑猥な笑い声をあげたその時、船倉にバン!という音が響いた。薄笑いを浮かべたまま、巨漢はその動きを止めた。
のっぽが腹を押さえた。その手は溢れ出る血で赤く染まっている。
「ひいぃぃ…」
腰を抜かした王が床を這い回る。船倉に降りてきた男が、王の足を踏みつけ、拳銃をつきつけた。ダークスーツにサングラスとマスクをした初老の男だ。
「お願いある、お金ならやるね…」
王が媚びるように哀願した。今の今まで瑞紀の排泄を嬲っていたのが、皮肉にも、その股間は恐怖による失禁で濡れていた。
「助けて…、命だけは…」
しかし、それが王の最後の言葉となった。
瑞紀は凍りついた表情でその一部始終を見ていた。
王を片づけた男が瑞紀の檻に近づいてくる。
「あなたは、いったい…」
瑞紀がかすれた声で尋ねた。
男がサングラスとマスクを外す。瑞紀は息を飲み、そして叫んだ。
「部長!」
知性的で学者の様な顔が現れた。それは警視庁の幹部の一人。瑞紀の上司、加納警備部長だった。