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逃亡
【その他 官能小説】

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逃亡-39



 加納は瑞紀の手首を掴み、檻の中から彼女を引っぱり出した。
 しかし、それは彼女を解放するためではなかった。心細げに身を縮こませた瑞紀の身体が完全に外に出た途端、加納は掴んでいた手首に手錠をかけ、檻の鉄格子をくぐらせて、残る一方の手首にも手錠をかけた。
「な、何をなさるんですか?!」
 そう言えば、これと同じ問いをしたことがある。しかも、同じ相手にだ。
 警視庁に採用された当初、瑞紀は温厚で、紳士的なこの上司を父親のように慕っていた。ところが、男の方は、そうした瑞紀の気持ちを自分に都合の良いように解釈したのである。執拗につきまとわれ、瑞紀はこの上司を、嫌悪と恐怖の目でしか見られなくなった。そして、偶然二人きりになったエレベーターで抱きつかれた時、セクハラで訴えることを決意したのだった。
 加納は、彼女を床に押し倒した。瑞紀は両手を頭の上で檻に固定された格好で、船倉の床に仰向けに倒れ込んだ。
「私の誘いを受けてくれていれば、こんなことにはならなかったのに。」
 ぽつりとそう言うと、加納は瑞紀の上におおいかぶさり、両手で乳房をこね回した。
「やめて、やめてください!」
 加納の唇が、可憐な乳首をとらえると、瑞紀は美しい髪をバラバラに振り乱して叫んだ。顔見知りの男に身体を弄ばれるのは、緋村や王たち、見ず知らずの男から陵辱を受けるのとは、また別の屈辱があった。
 やがて、乳首を吸っていた唇が、なめらかな肌を舌先で舐めながら、臍から下腹部へと滑り下りていく。
「いやっ!やめてっ!」
 加納の意図を察知して、瑞紀が必死で足をバタつかせて抵抗した。しかし、加納は驚くほど強い力で彼女の太腿を押し開き、薄い茂みに鼻を埋めた。一瞬、ほのかな残尿臭がし、瑞紀の下腹がピクンと震えた。
 加納が瑞紀の秘部を舐め始めた。指と唇で瑞紀の花びらを何度もなぞり、包皮を捲ってクリトリスにチュッ、チュッとキスを注ぐ。しかし、毛嫌いしていた上司のその行為は、瑞紀を興奮させる以上に、羞恥や嫌悪感、不潔感を感じさせた。
「いやっ、もう嫌っ…」
 瑞紀のすすり泣く声を聞いて、加納は急に彼女の股間に埋めていた頭を持ち上げると、開いた脚の間であぐらをかいた。瑞紀の股間は加納のねっとりした唾液で一面おおわれ、陰毛はベットリとひらたく貼り付いている。
「君は、どこまでも私を受け入れてくれないんだな。」
 哀しげな顔でそう言うと、加納は床に置いていた拳銃を手に取った。
 目を閉じ、泣きじゃくっていた瑞紀は、何か冷たい物が股間に当たる感触で、思わす目を開けた。そして、言葉を無くし、怯えてぶるぶる震えだした。
 加納は、拳銃の銃口を秘裂の入り口にあてていたのだ。
「私の物を受け入れるのが嫌なら、これでもくわえていろ。」
 加納は拳銃を肉壺の中にゆっくりと挿入していった。黒光りする銃身が、ピンク色の肉唇を押し開いて、グイグイ埋まっていく。ひんやりした金属の感触が異物の侵入を瑞紀に感じさせた。
「あうっ!」
 肉門が大きく押し広げられるのを感じ、瑞紀は眉を寄せて呻いた。回転弾倉式拳銃のレンコンのような弾倉の部分までが押し込まれたのだ。陰裂が大きく口を開いて歪んでいる。
 加納は拳銃をぐねぐねと動かしたり、弾倉の部分を出し入れしたりして、瑞紀の身体を弄んだ。
「あ…、あ…」
 瑞紀が目を大きく見開いて、言葉にならない声をあげる。陰部を玩具にされる恥辱と、性感帯への刺激と、いつ拳銃を撃たれるかという恐怖で、頭の中は完全にパニック状態になっていた。
「どんな気持ちだね。瑞紀…」
 加納が薄笑いを浮かべたちょうどその時、彼の背中に硬い物が押し当てられた。
「そこまでだ。セクハラ上司っ!」
 振り向いた加納の前に、怒りの表情を浮かべた男が拳銃を構えて立っていた。
「だ、誰だ。きさまは?」
 男は胸ポケットから警察手帳を取り出した。
「警視庁PFFT対策本部所属。野上巡査部長でありますよ。警備部長殿。」
「野上さんっ!大丈夫ですか?」
 甲板から階段を駆け下りて来た西岡が、「あっ」と声をあげた。
「警備部長、なぜあなたが?」
「に、西岡君…。」
 かつての、はるか目下の部下の顔を目にして、加納の表情に動揺が走った。
「西岡、こいつが誰か知っているか?」
 唐突な野上の質問の意図をはかりかねて、西岡がとまどった表情を浮かべる。
「教えてやろう。早瀬警部補に交際を迫っていたセクハラ上司はこいつだよ。」
 西岡は思わず瑞紀を見た。加納の顔を見つめるその表情が、野上の言葉を肯定している。
「それに、警察官僚あがりの森橋法務大臣がまだ警察庁にいた時、『森橋甚三郎の懐刀』と呼ばれた男でもあるな。」
 詳しい事情は未だつかめないにしても、大物政治家の森橋が今回の一件に深く関与していることは、今や西岡の目にも明らかになっていた。
「もう一つ、今回の緋村釈放劇のシナリオを書き、PFFTに警察の動きを逐一流していた内通者だ。」
 刑事部長という要職にある加納であればこそ、警察の方針を決めることができたし、部下の瑞紀を人質に取られていることを理由に、詳細な情報を自然に集めることができたのだ。
 加納は一言も発することなく、学生の研究報告を批評する教授のような表情で野上の顔を眺めていた。
「その分別くさい表情の裏に冷酷な顔が隠されているんだよ。
おそらく、森橋の命令でPFFTの活動家を皆殺しにし、そのついでにセクハラで自分を訴えようとしていた早瀬警部補まで始末しようとしたんだ。」
「…私は…、早瀬君が好きだった…。」
 わずかに聞き取れる程度の声で、加納はぽつりとつぶやいた。
 静まり返った船倉に、パトカーのサイレンが近づいてくる音が届いた。
「まもなく県警が来ますよ。」
 西岡の隣に下りてきた内藤が、諭すような口調で言った。
「警備部長。潔く犯した罪を償いなさい。それが、あなたの責任だ。」
 しかし、その言葉を聞き終わる前に加納が動いた。
 「待て!」と叫んで野上が飛びかかったが、一歩遅かった。
 ドギューン!
 薄暗い船倉に、最後の銃声が響いた。それは加納が自らのこめかみを打ち抜いた音だった。


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