逃亡-35
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「待たせたな。今夜出航だ。」
管理事務所から倉庫に戻ってそう言った東條は、少し憔悴した様子を見せていた。
もともと、今回の逃亡計画を立てたのは彼である。緋村を逮捕されてから、手当たり次第に無差別テロを繰り返し、次は大物政治家を狙おうということになった時、PFFTが標的にしたのは法務大臣の森橋甚三郎だった。ところが、事務所に爆弾を仕掛けようとしたメンバーがへまをやり、警備員に捕まってしまったのだ。仲間を取り戻そうとして森橋に接触をはかった東條に対し、森橋は政敵の元村誠八の暗殺をもちかけてきた。
対価は緋村の釈放と国外逃亡の手助けである。計画は順調に運んできたのだが、ここにきて森橋運輸の協力姿勢が怪しくなり、この数日、高額の輸送費を要求するなどして、なかなか船を出航させようとしなかったのだ。
(しかし、これでタヌキ親爺との駆け引きも終わりだ。)
東條がホッとした表情でタバコに火を点けた。
「女を積み込むね。」
王が言うと、例の巨漢とのっぽの二人が立ち上がった。彼ら二人が、瑞紀の監視などを受け持っているらしい。
「外に出る前に、制服を脱いでもらうあるね。」
「い、いや…」
瑞紀が大きく目を見開き、激しくイヤイヤをしながら後ずさった。
ボタンが千切れた、サイズの合わない制服であろうと、服を着ていると、たとえわずかでも安心感を取り戻すことができた。裸になることは、恥ずかしい以上に、そうした安心感を奪われることになり、辛かった。
「お前、もう私が買った奴隷ある。オークションで次の買い主が決まるまで、服いらないね。」
「そ…、そんな…」
屈辱で目に涙が滲んでくる。ここまで虐められて、瑞紀の気丈さも相当もろくなってきているようだ。
「時間がないんだ。脱がすんなら、さっさと脱がしてしまえ。」
少しイライラした口調で東條が言うと、巨漢とのっぽが嬉々とした様子で瑞紀に迫ってきた。
「きゃぁっ!やめてっ!」
瑞紀が悲鳴をあげた。
のっぽは、ボタンが外れた制服の胸元を左右の手でつかみ、思いきり開いて肩から抜く。華奢な肩先が露わになり、乳房がプルンと飛び出した。
背後に回った巨漢は、スカートのフックを外し、腰の部分を掴んで一気にスカートをずり下ろす。形の良い尻が剥き出しになり、下腹部を覆う絨毛が現れた。
瑞紀は、再び生まれたままの姿にされてしまった。
王は後ろ手に手錠をかけ、手錠に括りつけたロープを瑞紀の股の間に通した。
東條が戸を開けると、思いもかけない明るい日差しが倉庫の中に差し込んできた。
「よし、行くよ。」
股間を通したロープを、前に立った王がグイと引っ張り上げた。
「あうっ!」
亀裂にロープが食い込み、瑞紀の小さな肉芽を擦る。瑞紀はその場にへたり込みそうになった。
「さっさと歩きな。」
巨漢が瑞紀の腰を支え、滑らかな背中をどんと手で押した。
外に出るとまぶしさに目がくらむ。ここに来てから時間の感覚がなかったが、太陽が真上にあるところを見ると、昼間なのだろう。
王はロープをグイグイ引いて歩き出した。秋晴れの青い空の下、一糸まとわぬ姿で港を歩く。潮風が瑞紀の肌を撫でていった。せめて乳房と股間を隠したかったが、後ろ手に手錠をされているため、それもできない。
しかも港は無人ではなかった。それどころか、港の警備員、船に荷物を積み込む作業をしている男達が大勢いて、みんなニヤニヤしながら彼女の裸体を眺めている。瑞紀の身体は恥ずかしさで震え、顔は真っ赤になった。
「ううっ…」
瑞紀の唇から呻き声が洩れる。歩みが遅くなると、先を歩く王との距離が開き、ロープがピンと張って媚肉の合わせ目を擦りたてるのだ。いつの間にか、その部分がじっとり濡れてきている。
「おっ!素っ裸だ!」
「おねえちゃん、いい身体してるね。」
「一発やらせてくれよ。」
仕事の手が空いているらしい数人の男達が、瑞紀の回りを取り囲むように歩き、卑猥な言葉を投げかけてくる。瑞紀は無言のまま瞳を閉ざし、綺麗な歯で唇を噛んだ。
瑞紀を連行している王たちは、意地悪くわざとゆっくり歩いたり、立ち止まったりする。そのせいで瑞紀は、舐めるように裸体を凝視する男達の視線に長い間耐えなければならなかった。
そうして、やっと着いた桟橋には、外国行きの貨物船が停泊していた。
「よし、船に乗るね。」
船に掛けられた急な階段を上る度に、剥き出しの乳房が揺れた。
「見ろよ。プルンプルン揺れて、柔らかそうなオッパイだぜ。」
「ホント、揉んでみたいぜ。」
船の上から眺めている船員達が、瑞紀に聞こえるような大声で言う。かと思うと、今度は階段下の桟橋の方から声がした。
「やった、見えたっ!」
「オ××コだ!」
「おい見ろよ、濡れてるぜ。」
階段の下に男達が集まって、上を見上げている。階段を登るために片足をあげる度に、臀部と太股の間から恥毛の茂みやピンクの割れ目がチラチラと見えているのだ。歩きながらロープで擦られた陰裂から蜜がにじみ出て、内腿を濡らしているのさえ、見られてしまっているに違いなかった。