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愛しているから
【青春 恋愛小説】

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すれ違ってばかりの俺達-7

異変に気付いたのはすぐだった。


沙織が腕を絡ませてきた、俺の左腕。そこがやけに熱をもつ。


柔らかくて、温かくて。


こっ、こっ、これは……!!


思わず自分の左腕に目をやると、ガシッとしがみつく沙織の姿。


そして特に熱を持った部位を見ると、沙織の豊満な胸が、俺の腕に少しだけ潰れていた。


そう、沙織の胸が俺の左腕に密着していたのだ。


ま、まずい!


否応なしに疼き出す下半身。


沙織はと言うと、そんな俺の焦りなんて全く気付かず、はにかんでこちらを見ていた。


彼女にしてみれば、甘い愛の言葉を囁き合って、ちょっとしたイチャイチャモードに入っているのだろう。


普段よりも、沙織が少しだけ大胆になれたのは、ビーチマジックのせいなのか。


だけど、俺は正直それどころじゃない。


そんな可愛く笑われて、胸を押し付けられて、まともでいられるかっつうの!


もしここが二人だけの空間だったなら、迷わず沙織を押し倒していたけれど、あいにく人でごった返すビーチだし。


こめかみを伝う汗を拭いながら、少しだけ前屈みになる俺を、すれ違う人達が怪訝そうに見ていた。


端から見れば、腕を組んだカップルなんていっぱいいる。


だけど、俺は女を知らない童貞なわけで、こんな些細な刺激でも速攻で反応してしまうくらい純粋なのだ。


ジンジンと疼く下半身。吹き出してくる汗。


つーか、もう限界だ!


わずかの理性で俺は、沙織が組んでいた腕を思いっきり振り払った。


すっかり汗ばんだ左腕は、湿った潮風に晒され、熱を奪っていく。


ハアハアと息を荒げている俺を、


「え?」


と、沙織が呆然と見つめていた。


二の舞になってる、そう思った。


でも、今回ばかりはマジでヤバイのだ。


水着姿を見ただけでもヤバかったけど、今回は沙織の柔らかい胸を肌で感じてしまった身体は、こもった熱を放出させなくては治まる気配がなかったから。


唖然と俺を見ている沙織をよそに、キョロキョロ視線を動かせば、目的のトイレマークがあった。


「沙織、ごめん! 俺、トイレに行ってくるから先に海の家で待ってて!」


「ちょ、ちょっと待ってよ!」


ごめん、俺、もう限界なんだ!


そう言って沙織に背を向けた俺は、首からぶら下げた小銭入れを強引に手渡し、逃げるようにトイレに駆け込んだ。





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