変人の温もり-6
当然部屋も立派だ。家具など新しくは無いものの、並みの物ではないことは見ればすぐ分かった。しかしどこか違和感を感じた瀬奈。注意深く見てみるとある事に気付く。
「何かさぁ…、所々に安っぽいっていうか、平凡な物があるのね…。」
例えばテレビ。新しそうだがお屋敷には似付かないような20インチあるかないかの小さなものがポツンと置かれている。
「あー、それはな、家電とか壊れて交換したやつのことだろ?基本的にデカいテレビも要らないし、いいレンジもいらないからな。だから言ったろ?俺はサラリーマンだって。だから自分の給料で買えるもんしか買わないんだ。親の遺産は手つかずで銀行に眠ってるよ。」
「そうなんだ…。でも逆に目立つね。」
「そうか?だいたいテレビなんかに金使うならいい竿やリール買った方が全然いいしな。」
「そ、そう…」
まぁ台風の中釣りに行くぐらいだ。そういう考え方をしてもおかしくはないと考えた。
「あ〜あ…」
溜息をつきながらがっかりしたような姿を見せる瀬奈。
「どうした?」
怪訝そうな顔で海斗は瀬奈を見る。
「私ね、車の中で妄想してたの。海斗は貧乏で四畳半のアパート暮らしをしていて彼女もいなければお金もない。釣りしか楽しみのない淋しい男で平凡な毎日を過ごしてて、そこへ私が一緒に住む事になって、つまらない生活をしていた海斗が私と一緒に暮らすようになり人生が楽しくなる、みたいな。お金がない中、私がやりくりして食事を作って海斗を助けるの。そんな小さな幸せが海斗には嬉しい…みたいな、さ」
夢見る少女的に目を輝かせて話す瀬奈に一言。
「馬鹿かおまえ…?イタすぎるぜ…」
「い、イタいとは何よ!?」
「やっぱ海に飛び込んだ時、いくらか海面に頭打ったか??」
「打ってないし!あ〜あ、こんなお金持ちじゃ私が何しても海斗は喜ばないじゃん。」
口を尖らせて拗ねる瀬奈。しかしハッと何かを思ったように表情を変えた。
「でも彼女はいないんだよね??」
「あ、ああ。いないよ。」
瀬奈はニコ〜っと嬉しそうな顔で言う。
「じゃあ夜は喜ばせてあげる♪」
「いっ…!?」
一体何のつもりかと思った。
「何も役に立てそうもない上、お金もないからせめて夜は頑張らさせてもらいまーす♪」
「よ、夜はって…、いいよ…」
「だって海斗はムラムラしたらどうしてるの?」
「そりゃあ風俗行ったりして…」
さすがにオナニーしたりとは言いずらかった。
「だったらそのお金、節約出来るじゃん。その分でいい竿買えるでしょ?いい?これから風俗禁止だからね?私が満たしてあげるから♪」
「な、何を言ってるんだお前は…!?」
「え〜?嬉しくないのぉ?」
「う、嬉しいけど…。」
「じゃ、いいじゃん!」
一体どこまで本気なのだか判断に苦しむ海斗だった。