変人の温もり-4
「飯はどうする??」
食料品を買い忘れた事に気付く海斗。いつものように一人ならどうにでもなるが、何が好きで何が嫌いか全く分からない瀬奈に気遣ってみた。
「いつもはどうしてるの??」
「いつもは、ほら、今日は釣れなかったけどいつもは大漁だから余った魚を冷凍してあるんだよ。だからそれを食ってる。」
「え?料理するんだ!」
「当たり前だろ?自分で釣った魚を自分で料理しない奴なんて釣りキチじゃあないからな!」
「へ〜。私はてっきりコンビニ三昧かと思ったわ。」
「ナメンナよ?ガハハ!」
鼻高々に笑う海斗。
「じゃあそのお魚で♪」
「おまえ、魚食うの?」
「私、お魚好きだよ?お肉よりも。」
海斗の目がキラリと輝いた。
「マジ?」
「うん。お魚なら何でも好きよ?」
ますます海斗の目が輝く。もはやギラギラしてきて怖いぐらいだ。
「気に入った!正直得体の知れないもん持って返ってしまったと思ってたけど、おまえ、いい奴だ!魚好きに嫌な奴はいないからな!」
海斗の不安が一気に消え去った。魚好きというだけで偉い単純である。しかし海斗にとって魚は人を見極める物差しなのだ。
「酷〜い!得体の知れない女だと思ってたんだ〜!…って、そりゃそうか…。確かに海斗からしたら得体の知れない女だよね。」
「ハハハ!悪い悪い!でももう平気だ。なんたって肉より魚が好きなんだもんな!そうかそうか。魚好きか!」
物凄く嬉しそうな海斗を見て、瀬奈も安心した。明るく振る舞ってはいたが瀬奈だって不安だった。初めて会った男と最低今日は同じ屋根の下に寝泊まりするのだ。どこにも行く当てがない。たから海斗に世話になるしかない。正直不安は抱えていた。しかし出会ってから今まで海斗を見てきて少なくても悪い人ではないのは分かってきた。それに現在の自分にとって海斗の明るさは光だった。自殺しようとした自分がこんなに笑えるのも海斗のおかげだ。瀬奈は不思議と海斗を信頼できると思えたのであった。