変人の温もり-3
車は海岸から離れて行き街中へ入って行く。
「本当に家に来るのか??」
「だって行くとこないし。ダメ??」
「いや、ダメじゃないが、となると色々必要なもん出て来るだろ?生活必需品とか。」
特に女性だ。必要なものは色々あるだろう。まして荷物ゼロだ。なおさらだ。
「別にいいよ。」
軽く答える瀬奈に海斗はすぐに言う。
「良かねぇだろが!?タオルなんかは家にあるやつ使えばいいけど歯ブラシとかシャンプーとかボディーソープとかなきゃ困るだろ?シャンプーとかお気に入りのあるんだろ?」
「えー?いいよ〜。シャンプーとか海斗が使ってるので。ボディーソープとか、石鹸でいいし。」
「…。それに下着とか服とかどうすんだよ!?一着しかないだろ?」
「別に着なくてもいいし。」
「おまえは裸族か!?裸でウロチョロされたらこっちが困るわ!」
「私は別にいいけど。良くエッチなDVDとかにない?全裸家政婦、みたいな!海斗嬉しいんじゃない??」
「…。悪くねぇなぁ…。じゃなくて!ダメダメ、下着とか服はなきゃダメだ。やっぱ今から買いに行くぞ!」
「お金使わなくてもいいのに…。」
そんな瀬奈を横目にショッピングモールに向かった。取り敢えず一通り必要な物は揃うからだ。地元では有名なショッピングモールに到着する。
駐車場に入り車を停めると海斗があるカードを差し出した。
「下着とか俺は恥ずかしいからこれで買って来いよ。他に必要なものがあれば何でも買っていいぞ?」
そんな海斗に瀬奈は言う。
「海斗!リチャード・ギアみたい!プリティウーマンごっこ!?」
「あ、分かった!?アハハ!」
あの名シーンを一度やってみたかった海斗。その夢が叶い満足げな表情を浮かべるが、すかさず瀬奈が突っ込む。
「ただ、カードがワオンだけどね!」
そう、クレジットカードではなくワオンだった。
「それを言うなよ〜。」
「でも海斗らしくてグッドよ!でもやっぱり一緒に行こうよ。」
「え〜?やだよ、俺、女の下着売り場行くの…。」
「いいからいいから!」
瀬奈は海斗の腕を引っ張り店内へ向かう。
「え?ウニクロでいいの?」
下着専門店とか色々あるのだが庶民的なウニクロに入る。
「十分十分!ありがたいわ、海斗♪」
照れる海斗を連れて下着やシャツなどを選ぶ瀬奈。
「もっと高いの買ってもいいんだぞ?」
あまりに安いものばかりを選ぶ瀬奈を心配した。
「いいの。これでも私には高いくらいだから。」
お買い得品ばかりを手にして会計する瀬奈。
「大事に着るからね?」
満面の笑みで海斗を照れさせた。それから歯ブラシなど必需品を買い車に戻る。
「何か新生活が始まるって感じ♪」
「ま、始まるんだけどね。」
よくよく考えると海斗は色々と心配になってしまう。今日初めて会ったばかりのどこの誰だか分からない女といきなり同じ屋根の下で暮らし始めるのだ。次第に不安が大きくなって行くのであった。