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バルディス魔淫伝
【ファンタジー 官能小説】

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拾われて飼われました 前編-1

自分より身長より大きいスズメ蜂、色は全体的にピンクと紫の縞模様。それが飛んできて、さやかは涙目で必死に走った。
羽音がさやかの悲鳴をかき消す。
背中に飛びつかれた。
ブレザーの上着の上から蜂の黒い毒針が刺された。
さやかは急激な寒気と、目の前が暗くなっていくのを感じた。
地面に前のめりに倒れる前に、さやかは空中に抱えられて持ち上げられかけていた。
「蜂は熊とでも戯れていろ」
頭部と羽を分断された蜂は、獲物のさやかを放り出し針を出したり引っ込めたりしながら、カサカサと逃げて行った。
蜂の頭部が蹴飛ばされた。
頭部のアゴがガチガチ鳴っていた。危険を感じるとこの蜂はアゴを鳴らして仲間を呼ぶ。
草むらに仰向けに倒れているさやかの顔色はひどく青ざめ、呼吸が弱くなっている。
蜂は毒で獲物を仮死状態にして巣に持ち帰り、生かしたまま喰うのである。死体では腐敗してしまうが、鮮度を維持しておくのだ。
「これは人間だな。めずらしい」
そう呟いてさやかを仰向けにすると術師ガーヴィは手首と首すじで脈を調べる。
「よし、解毒してみるか」
ガーヴィは両手をさやかに向けた。
手首から先が十本の触手に変化してさやかに絡みついていく。
周囲にはさやかと、ガーヴィしかいない。
蜂が飛びまわっているので危険なので、旅人しか通りかからない。
「んんっ、ふぐっ、んん!」
さやかが呻き声を上げたのは口の中に触手が突っ込まれているからである。
「意識が戻ってきたようだな」
まだ目がかすんでいるさやかの手足が大の字に広げられていた。
「こら、暴れると毒が早く全身にまわってしまうじゃないか。じってしていろ!」
叱責されて、さやかの動きが止まる。
九本の触手で拘束されている制服姿の乙女の口に入れられていた触手がブルッと震えた。
「吐くなよ、解毒効果があるからな」
口の中にぬるりとしているが、ほのかに甘い粘液が触手の先端から放たれた。
「うぷっ、んうぅっ!」
さやかは少し飲み込んでしまったが、触手をくわえたまま、唇の端から半透明の粘液と唾液をたらした。
「吐くなって。尻に突っ込まれたくないなら、とりあえず飲み込め」
さやかは左右に首を振って、触手を吐き出した。
ぼやけていた視力が回復してきた。
声のほうを向くと、少し離れたところに両手を突き出した若い二十歳ぐらいの男性がファンタジーRPGのコスプレのような衣装のロープをまとって、眉を寄せて怒ったような表情をしていた。
「きゃああぁっ、人の口に何を突っ込んでるのよっ、バカ、変態、やめなさいよっ!」
若い男の顔立ちに一瞬だけ見惚れたさやかだったが、胸の前で蛇のように先端をもたげているものを見て騒ぎ出した。
触手の形状は巨大ミミズというか、やたらと長いぺニスとも見える形状だったからである。
「命の恩人に対してそんな口を叩くとは、いい度胸だな。人間はこんなに癖が悪いのか?」
「やめっ、ふぐぅううっ、んぐっ!」
さやかの口に再び触手が押し込まれた。
「しばらくそうして安静にしていろ」
さやかが触手を吐き出す。離せ、汚い、抵抗できないようにしてするなんて最低、と罵り、また突っ込まれるということを繰り返しているうちに、さやかの頬は赤らみ、手のひらや背中に汗がにじんできた。
肩を揺らし、鼻で息をして、威嚇する猫のようにふぅふぅと音を立て、奇妙な顔立ちは良いが手首から先が怪物の男を敵意剥き出しで睨みつけている。
そんなさやかの目の前で、ガーヴィはあくびをした。さやかはそれを見て、生まれて初めて殺意が芽生えるほとの怒りを感じた。
「かじるな、痛いだろう」
フランクフルトのように噛みちぎってやると、さやかは羞じらいを捨てて噛みついたのだが、若い男が苦笑してそう言っただけだった。
「ううっ……」
さやかは意気消沈して、ぽろぽろと泣き出した。
「おい、大丈夫か。どこか痛みがあるのか。背中の傷が痛いのか。頭痛がするのか?」
解毒が間に合わずに頭脳に毒がまわってしまったのかと、ガーヴィは心配して声をかけた。
「うるさい!」
触手を吐き出したさやかが甲高い声でガーヴィに怒鳴りつけた。
ガーヴィがため息をついて、軽く目を閉じて精神集中すると、さやかを拘束していた触手が解けていく。触手は十本のしなやかで長い指に戻った。
ガーヴィは腰に下げたバックから黒皮の手袋を素早く慣れた手つきではめた。
「うわあぁん!」
さやかが泣きながら腕を振り回して、ガーヴィの腕や腹や胸のあたりを叩いた。
顔を殴りたくても背丈が足りないからだ。
「ひっ!」
さやかが驚いて小さな声を上げた。ガーヴィはあきれ顔で、さやかの小さめな頭部を上からつかんだ。
一瞬たじろいださやかをぐいっと引き離す。さやかが泣きながら、また腕を振り回したり、ブーツを爪先で蹴ったりしてくる。
若い男の手が変身してなければ巨大な蜂よりも怖さを感じず、むりやりやらしいことをされたという乙女の怒りが我を忘れさせていた。
「保護してやろうと思ったのだが、これでは野生の山猫よりもひどいな」
青年が手を離して、前のめりになったさやかの頭が闘牛さながらに突っ込んでくるのを、ガーヴィは軽やかに身をひるがえしてかわした。
さやかは、そのまま気が抜けてしまい、その場でしゃがみこんでしまった。手で顔をおおってうつむいて泣きじゃくった。
困った顔をしていたガーヴィは、さやかに背を向けて歩き出す。
「責任とってよ、最低!」
その声にガーヴィが立ち止まり、あっさり引き返してきた。さやかは変質者が引き返してきたと思い、警戒して立ち上がると後ずさりをした。
また、やらしいことをする気なんだと思い込み、足をもつれさせながら走り出す。
「はぁ、はぁ、痛っ!」
何かにつまづいて膝をすりむいた。
石かと思って見るとそれは巨大蜂の頭部だった。まだ触覚だけがゆっくり動いていた。
「もう嫌あぁぁっ!」



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