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バルディス魔淫伝
【ファンタジー 官能小説】

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拾われて飼われました 前編-2

これが、ガーヴィとさやかの出会いであった。
「で、どうしたの?」
「私、腰が抜けてしまったみたいで、声を聞いた師匠が抱きかかえて魔法陣を使って近くの街まで運んでくれたんです」
「へぇ、そうなんだ」
ちらりと吟遊詩人のセリアー二ャが頭の上の獣耳をぴくぴくさせながらガーヴィの顔を見た。
瞬間移動の魔法陣と呼ばれる呪符は安くはない。遺跡のダンジョンの緊急脱出用のマジックアイテムだ。
街はまだ夕暮れ前で、その雑踏の中をガーヴィが黙ったまま歩いていく。さやかは抱きかかえられたまま、すれちがう獣人たちにじろじろと見られているのを感じていた。
聞き慣れない言葉で獣人が何かを小声で囁いている。さやかは獣人の容姿や服装が自分とはちがうことや、言葉すらちがうことにショックを受けるよりも、お姫様だっこで運ばれていることがやたらと恥ずかしくてしかたなかった。
「さやかはガーヴィの言ったことはわかったのに、他の連中の言葉はわからなかったの?」
「はい。治療で飲んだ液の効果で師匠の思念を読めていて、翻訳されて聞こえてたんだと思います」
ちがう、俺が通じるように念を込めて話していたからだとはガーヴィは言わずに二人の会話をしらんぷりをしながら、それとなく聞いている。
女たちのおしゃべりしている中に入ると、からかわれたりしそうで面倒だから離れておこう、といったところなのであった。
ガーヴィは街の宿屋の部屋に案内されると、さやかをベットに横たえて靴を脱がせた。
そして、さやかのひたいに自分のひたいをつけて首を少し傾げた。顔や耳が赤いので熱が高いのではと思ったのだが、微熱のようだったからだ。
さやかはお姫様だっこで運ばれて、靴を脱がされて、ベットに寝かされた途端にひたいで熱を調べられたので、鼓動が高鳴りっぱなしだった。
ガーヴィの顔が近づいてきたときにはキスされるのかと思ってしまった。
宿屋まで二人を尾行していたリザードマンが店の裏口で宿屋の主人に金貨を一枚渡すと二人の部屋の場所を聞き出していった。
シュナイザー犬の顔をしたコボルトの宿屋の主人は金貨を腰から下げた小袋にしまい、裏口から受付に戻っていった。
「お前はいつ飼い主から離れたんだ?」
ガーヴィが二階の客室の窓から下の通りを見ながら、さやかに言った。
「えっ、飼い主って?」
さやかが聞きまちがいだと思いながら聞き返す。
「変わった服装をしているし、この国の言葉でもないということは異国の者が飼い主か?」
「これは綾瀬学園の制服で、日本語で話していますけど、何かのお祭りか何かなの?」
「お祭り?」
「仮装パレードなんでしょ?」
ガーヴィがまじまじとさやかを見つめた。
さやかは海外ではハロウィンなどのイベントには市民が仮装パレードを行われる、というニュースを見たことがあった。
人間はめったにいない。だから、人間を飼っているのは王族か、かなり高い地位の貴族ぐらいである。誰のところからはぐれてきたのか、ガーヴィが考え込んでいると、きゅぅぅっ、と小さな音が聞こえた。
「お前、腹が空いてるんだな。そうか、蜂を捕まえて食おうとしたのか?」
「ちがうもん、追っかけられたから逃げたの!」
ピンクの巨大スズメ蜂なんか食べようとするはずがない。ダイエットで朝食ぬきで家を出たまま、バスを降りたら大草原だった。昼食は学食で食べるつもりだったのに、綾瀬学園前バス停だったはずのところも、学校も消えていた。さやかのほうが失踪して、こちらの世界にやって来た、ともいえる。
「携帯、電波がないってどうなのよ、まったく……」ぼやきなから、あてもなく歩いていたら蜂に追っかけられた。携帯電話もカバンも放り出しで全力疾走したが追いつかれて刺された。
「ちょっと待ってろよ」
ガーヴィが部屋にかごに入れられたパンらしいものと、リンゴらしいものを持ってきた。
その香りにさやかがうっとりとしていると、ガーヴィが丸い手のひらサイズのパンらしきものを手渡す。
さやかが躊躇したのは三秒で「いただきます」とかじりつくと、すぐに喉につかえて胸を叩く。
ガーヴィは飲み口のついた皮袋の栓を抜くと急いでさやかに手渡す。さやかは水が入っているのだと思い、飲み口を吸ってごくごくと飲んだ。
「ぷふぁ、あれれ、ふふっ……」
酔った。この皮袋はガーヴィのマジックアイテムで飲んでも翌日にはワインが満タンに補充される。
「一気にがぶ飲みするからだ、返せ!」
「だーめ、わたしが全部飲むのら、ふふふっ」
「人間っていうのは酒癖まで悪いのか!」
ガーヴィは皮袋を抱えて、満面の笑みを浮かべているさやかを見つめて「明日、二日酔いでも助けてやらんからな」とリンゴらしきものにかじりついた。
シャリッとみずみずしい音がして、酔ったさやかも、リンゴっぽいものにかじりついた。
歯ごたえはリンゴだが、味は柑橘系でさっぱりしていて、噛むとたっぷりの水分が広がる。
さやかはワインを飲んでは、すぐにリンゴっぽい果実をかじった。
「リンゴの丸かじりなんてわたし、したことなかったんだけど、すっごく楽しい!」
「リンゴってなんだ、これはロンズデールだぞ」
「おいしいね、ロンズなんちゃら」
「くっ、酔っぱらいめ、おぼえる気がないな」
さやかは、酔って緊張もほぐれたせいか、満腹になるとベットを一人で占領して穏やかな寝息を立て眠ってしまった。
「これは飼い主がベットを好きに使わせてたんだな、きっと。いい夢みてぐっすり眠れ」
ガーヴィが手袋の手でそっとセミロングの黒髪を撫でる。さやかはこのガーヴィの声を、眠っていたが夢の中でしっかり聞いていた。
宿の主人に「俺は少し出かけてくる、連れが寝てるからよろしく頼む」と言ってガーヴィが宿屋を出た。その背中が離れて見えなくなるまで、店の入口に出て宿屋の主人はじっと見つめていた。
寝ているなら好都合と裏口から出ると、仲間のリザードマンにチャンスだと知らせに走った。


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