美しくも儚い・・・-2
言えるわけがない――――・・・
暗黙のルールだった。
「本気で好きにならないこと」
それは初めに彼から提示された条件だった。
それをあたしは破ってしまった・・・一度口に出したらもう・・・
「なんでもないよ。仕事先でちょっと色々あってさ」
そう取り繕って。
彼のほうへ振り向いてヘラっと笑ってみせた。
「そうか、なんかあったら言えよ」と、半信半疑の彼に今度こそは「うん」と頷いてみせた。
「じゃあ今日は俺が朝飯作るか」そう言ってキッチンへと消えていく彼を見て、「そんなところが嫌なのよ」と毒ついてみても何故かそれは虚しくてあたしは顔を顰(しか)める。
本気じゃないくせに優しくする。
こんなに人を好きになったことはなかった。
こんなに純粋な愛は今までになかった。
この重い愛に、自分が押しつぶされそうだ。
「潮時、かな・・・」
再びそう呟いて。
あたしは彼の呼ぶ方へ歩き出した。
《了》