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好き…だぁーい好きなんだからっ!
【幼馴染 恋愛小説】

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杏を頼む-6

辺りは既に暗く、水銀灯がむらのない人口の光を狭い公園の隅々に注いでいた。

僕は御園サンにお願いして、彼に会えるよう話しを通してもらった、無論頭上に?マーク
を浮かべる杏には伝わらないように。

静まりかえった道を歩き、辺りを見渡す、するとつい数時間前まで初対面だった人を目にする。

「東堂……サン。」
「!」

ぎこちない声に振り向く彼。

「アンタは…。」
「初めまして…かな、長谷川絆です、東堂…真雄サン、だね?。」
「…アンタが、織原サンの話に出てた。」

御園サンから話を聞き、薄々は気付いてはいたそうで。

僕は彼に大事な話、というかお願いをしようと口を開こうとした途端。

「何やってんだよっ!」
「!?」

突然静寂を破り、僕に怒鳴りだす彼。

「織原サン、泣いてんだぞっ!表面上では明るく振舞ってるけど。」
「……。」

他の人にも言われた叱咤を口にし。

「…どんなに慰めたって、どんなに元気づけたってダメなんだよ、そんな物は気休めにもならない帰って相手を傷つけるだけ。」
「東堂…サン。」
「俺は小さい頃父を亡くした、周りは色々と励ましてくれたけど心の傷は一向に消えない
父が戻ってこれば…でもそんな事は出来ない。」
「……。」
「今の彼女も同じだ。けどアンタは死んだ訳ではない、戻ってこれるんだっ!。彼女に会ってやれ、そして生ぬるい気休めじゃ決して取り除けない心の異物を取り除いて楽にしてやれよっ!」

先手を打たれ言い寄られる、御園サンと言ってる事はほぼ同じ、なら返す言葉も同じ。

「それが出来たら苦労はしないよ…。」
「なんだと?」

イラっとする彼、僕は御園サンに言った事をそのまま彼にも口にし。

「…そうか、まぁ確かにお互い距離が縮まってすっぱり死別したら、生きる気力もなくすだろうな…。」
「君も御園サンも言いたい事は良く解る、一度はそう考えた、杏に全てを打ち明け奇跡を信じようって、でもドナー登録者の少なさ医師から聞いた適合確率の低さ、気が小さいって思われて仕方がないけど、とても奇跡だ言える感じでは…。」
「……。」

割と呑み込みが早い、眉を閉じ思考を巡らし。

「要件は何だ?まさか恋人の知人がどんなのか見る為だけにこんな夜に突然呼び出した訳じゃ…。」
「東堂サンっ!」
「!?」

いきなり声を張り、話を遮り、僕は間を置きハッキリとした口調で言う。


         彼女、織原杏を、どうか宜しくお願いしますっ!!


「……。」

誠実に、頭を深く下げる。彼は案の定困惑するが。

「どうか、杏を幸せにしてやって下さい!僕はいずれ死に彼女の元を去る。」
「いや、だからって!」
「御園サンに連れられ二人がボーリング場に居る所を見た。とても楽しそうだった!」
「……。」
「僕の代わり何て居ないのかもしれない、でも君と居る時の彼女はとても幸せそうだった
もし誰とも付き合って居なかったら、一人泣いているかもしれないっ!」

事実、僕が居なくて一人河川敷で泣きじゃくり、そんな彼女を救ったのは紛れもない今目の前にいる東堂サンその人だ。

「何だよそれ、俺に代行者をやれって言うの?」
「それは、その…。」
「もし仮にアンタが適合者を見つけ、この先もずーっと生き続けれたらどうするんだ?」
「……。」
「二人して俺を追い出すのか?俺は別にアンタ達の親でも都合の良い使用人じゃねぇ。俺は純粋に彼女を愛してる、治ったから別れてくれ何て、そんな都合の良い話があると思うのか?」

彼の言う事は最もだ、彼女の幸せばかりを考え、周りが見えてなかったか。

「そんな事言われても俺は承諾しない、18歳になったら結婚して籍だって入れてやる。
それでも連れ戻そうとするならこっちも全力で抵抗し、彼女を連れ逃げる。」
「……。」

彼からしたら身勝手な話、すると。

「辛くはないのか?」
「大丈夫、彼女はとても明るいし、一人でいるよりは。」
「そうじゃないっ!アンタはそれで良いのかって…。」
「えっ?」
「平気なのか?好きな女を別の男にやって…、自分は遠い所で一人いて。」
「……。」
「もしそうなら、アンタらの関係はその程度。」
「平気な訳ないだろっ!」
「!!」
「僕だって、僕だって彼女の事が好きだ、大好きだっ!いつも明るくて笑顔でどんなに落ち込んでいてもたちまち悩んでたのがバカらしく思えるくらい元気づけてくれて…。」
「……。」

眉を細め目を赤く染め、両手の平に視線を落とす。

「ホントは彼女と居たい、今すぐにでも、彼女を傷つけるとか病気とか関係なく!」
「……。」
「でもっ……でも、それは自分の勝手な都合だ、決して許される事ではない。」

僕なりに葛藤し考えに考え出した最善の選択。

「アンタ……。」
「だから、だからぁ!」

必死に頼み込み、再度力を込め頭を下げる、すると。

「!?」

肩にゆっくりとした手の感触、ゆっくりと顔をあげると。

「解った、彼女の事は俺に任せろ、まぁ向こうの意志もあるし、万が一の件については約束できないが…。」
「!!」

肩を掴み、僕の想いを全て理解し瞳を尖らせる彼、僕は顔にパァと笑みが浮かぶ、良かった。

「ありがとうっ!本当にっ!」

僕は狂った人形のように何度も何度も頭を下げ。

「家は何処だ?送るよ…。」
「あ、ありがとう。」

肩を並べ共に夜道を歩く。

「アンタ、良い奴だな。」
「えっ?」

その後「彼女がアンタを愛したのも解る気がする。」と付け足し。

これで、これで良いんだ、寂しくないと言ったらウソになるが、これで、杏は、ずっと笑っていられる筈……。


次回、19話へ続く。



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