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筆さばき、色のとりどり
【歴史物 官能小説】

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筆さばき、色のとりどり-4

「ま、まあ座りまひょ」男は蒲団の中央へ腰を下ろし、「おまえもこっちへ……。ああ、もそっと近くに……」女を並んで座らせた。

「こうして近くで見ると、やっぱりお絹はわしの連れ合いによう似とる……。だがな、今宵は女房やのうて、おまえを抱くんや。お絹を精一杯可愛がってやりたいんや」

そう言うと、嘉兵衛はやんわりと右腕をお絹の腰に回した。男の手の感触に彼女の脇腹が微かに震える。嘉兵衛の筋張った右手はお絹の張りのある柔肌をゆっくりと這い回った。腰から肩、肩から腕、腕から首筋、とんと下がってまた腰、そして太腿……。左の手も、いつの間にか別なところをやわやわと這っている。じつに丁寧な手の徘徊であった。

「おなごの扱いは京友禅と同じや。すぐには仕上がらんもんや。……まずは下書きから始めんとな」

嘉兵衛の手は脇腹や背中をまさぐっていたが、肝心の乳房や尻には触れてこなかった。そして、お絹がややじれったく思った頃、見透かしたように左手が乳房を下から揉み、右手が尻を撫で上げた。突然、くすぐったさと快味の混じった感じが湧き上がり、お絹は身体をくねらせた。
 乳房の揉み上げはじつに丹念で、尻の撫で回しも手厚かった。角蔵の愛撫は激しいものだったが、嘉兵衛の愛し方は正反対。丁寧で緻密だった。

「う…………」

やがて、お絹の口から微かに声が漏れる。嘉兵衛の指の腹が乳首に触れるか触れないか微妙な動きをすると、彼女の肩が動き、男の手が白い尻の割れ目に滑り込むと、女の脚がひくついた。
 そして、女体ほぐしという下絵描きの総仕上げ。お絹を仰向けに寝かせ、露を含み始めた秘裂へと手が伸びると、

「っはああ…………」

お絹の背がしなり、顔が紅潮した。嘉兵衛の手は女陰全体を押し包み、柔らかく押している。その微妙な手つきは京友禅の工程のひとつ、紙筒の先口から糊を絞り出す糸目糊置きの手の動きにも似ていた。慎重に、繊細に手を絞る。秘口は峻烈な甘さを覚えるわけではないが、じんわりと快味を引き出されてゆく。

「どうや、お絹。まったりした手さばきも、なかなかええもんやろう」

嘉兵衛の施しは角蔵に比べると、かなり緩慢なものだった。

「若いもんは、いらちやさかい、すぐ強く揉みたがる。けんど、おなごの身体は手順を踏んで、あせらず、そーろとほぐすのが肝要。わしは今宵、おまえを芯から蕩(とろ)けさせたいんや」

語りながらも嘉兵衛の手は休まず女陰をやわやわとまさぐる。

「……ん。……ああ。……ん」

お絹の尻が少し浮く。それは、陰部を男の手に押しつけることになり、つまり、もっと強く揉んでくれと、口には出さないが態度で示したことになる。

「さようか……。ほなら、これは、どないや……」

嘉兵衛は膣口を中指で、まったりとくじり始めた。

「あああーーーん。……いやぁ……」

ゆっくりとした指の抜き差し、おもむろな指の折り曲げ、そして、緩やかな指での掻き回し。膣の入り口が緋色の度合いを増してゆく。そこの肉がわずかに盛り上がってゆく。

「んんんーーー。……はぁあああーーー」

中指を駆使していた嘉兵衛が、今度は親指も導入する。拇指にて陰核をくすぐり始めたのだ。甘い疼きが倍増し、秘壺からトクリ、と女の白酒がこぼれ出た。

「い、いやあぁーーーー。……そ、そんなにされたら……、あ、あんんん……」

肉豆への刺激が続くと、淫らな香りを発する白酒は、後から後から溢れてくる。

「おお、ええか、ええか」

嘉兵衛はお絹の乱れようを見て目を細めた。そして、

「さあて、そろそろ下描きも仕舞いにしたろ……。お絹、まずは軽く逝ってもらうで」

淫水でふやけ気味になった指が抜かれると、代わりに、すぼめた唇が秘裂に押し当てられた。チュウチュウ音をたてて小陰唇が吸い立てられる。時折、肉豆にも唇が及ぶ。お絹は身をよじり喜悦の声を上げる。今度は喜兵衛の口が大きく開けられ、舌でベロリと女陰全体が舐められる。会陰から陰核まで淫靡に舐め上げられる。そして、嘉兵衛の舌が蜜壺に潜り込み、くじる。えぐる。欲情を誘う臭いの白濁した汁が男の口元を濡らし、顎に滴る。
 お絹の上げる声が甲高くなってきたのを確認すると、喜兵衛は舌で陰核をくすぐることに専念した。盛んに舌を転がせた。上下にヒラヒラ、左右にレロレロ……。その動きが続くと、

「んんんんっ! ……い、いく……、いく……、いっくうーーーーー!」

白肌の股間に震えが起こり、お絹は達した。肉豆は最大に張りつめ、それに呼応して乳房の先の女峰も堅くとがっていた。

 上気した顔で蒲団に横たわるお絹の背中を嘉兵衛が優しく撫でる。その男の股間では陰茎が、わずかに頭をもたげていた。花なら三分咲き、それくらいの勃ちでしかなかった。

「お絹。どうや、気持ちよかったか」

うなずきを確認すると、嘉兵衛は女の半身をゆっくりと抱き起こした。

「今度は、おまえに奉仕してもらおう」

「……奉仕?」

「わしのこいつを」陰茎を指さした。「寝起きの悪いこいつを、しゃんとさせてくれへんか」

言われてお絹は少し戸惑ったが、そろりと手を伸ばすと、嘉兵衛の男根をおずおずと握った。

「おお……、柔らこうて、ぬくい手やなあ……」

嘉兵衛はしみじみと目をつむる。お絹は陰茎をゆっくりと擦った。初めのうちは手の中で揺蕩(たゆた)っていた一物だったが、彼女の加える刺激によって、徐々に芯が通り、五分勃ち、七分勃ちとなっていった。

「なあ、咥えてくれへんか」

言葉に従い、亀頭を口に含むと、鈴口の先からヌルヌルしたものが滲んでいるのが分かった。微かな塩味を覚えながら男根を舐め、吸っていると、やがて、口の中の肉塊が十分な張りに至ったことを、お絹は感じた。


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