投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『歩』
【同性愛♂ 官能小説】

『歩』の最初へ 『歩』 1 『歩』 3 『歩』の最後へ

『歩』-2

「寝てなきゃダメだろ〜。ホラ飯は作ってやっからよ」
とベットの方に押しやると
「ありがとぉ〜…」
と歩はごそごそと布団にもぐりこんだ。ホント小動物みてぇだな…なんて考えながらとろろそばを作る。(汁ととろろかけただけ)
「できたぞ」
「ん…」
寝ている。寝付きいいな〜とか感心しながら起こした方がいいものか考え込む。すると
「わ…たるゥ…」
歩が寝言で呟く。その瞬間心臓が飛び出るかと思うほどビックリして、ドキドキする。何故か俺の視線は歩のちょっと乾燥した唇に吸い寄せられて、いつの間にか思わず触れていた。想像以上に柔らかい事に驚いていると
「んん…」
と歩が呟き、俺が慌てて手を離すとちょっと間をおいて目を開けた。俺は何でもないフリをして
「ホラできたぞ。これなら食えるだろ?てかお前寝るの早すぎるだろ〜」
などと誤魔化す。いつもより少し饒舌だが歩は気にせず
「ごめんごめん。あっとろろそばだ〜♪」と食べ始め俺は内心ホッと胸をなでおろしていた。
歩を見ると勢い良く食べる為色んな所につゆをまきちらしている。
「あ〜も〜そこらじゅうつゆだらけじゃん」
と拭いてやると
「んッ…ありがと☆」
と言われ、やたら二人の距離が短い事に気付く。目が合い沈黙が少しあって、互いの唇が触れた。そこからは止められなかった。うだるような暑さの中俺たちは初めてつながった。それからは互いの家に行けば必ず互いのカラダを貪り合った。
歩は俺の事好きなのかな…とたまに思うが、えっちするって事は好きなんだろうと自分を納得させる。
でも最近歩の様子がちょっとおかしい。えっちの最中によく名前を呼んでは「何でもない」と言うし、二人でいる時俺を見ながらボーっとする事も多く「大丈夫か?」と聞いても慌てたように「大丈夫だよッ」と言う。もしかしたら…なんて考えてみてはその考えを無理矢理打ち消す。歩を失う事は考えたくなかった。それくらいもう俺に歩は必要不可欠な存在だった。
でも、突然歯車は狂い始めた。

「今日歩んち行っていい?」
俺たちはサークルも入ってないしバイトもしてないから、家に行っていいかどうか聞くのは社交辞令みたいなモンで断る事も断られる事もなかった。しかし
「あー…ごめん、ちょっと用あるからしばらく無理だわ。ホントごめんな〜」
一瞬何を言われたのか理解できないくらい衝撃的だった。
「あ…そうなんだ。じゃあ俺んちくる?」
心が、気持ちがざわめく。頼む…"うん"って言え…
「用あるんだって。無理だから(笑」
冷たくはないが、しかしキッパリと断られた。その衝撃はあまりに大きく、俺は慌てて
「そっか。そうだな。悪い、俺もー帰るわ。」
と言い「え?」と驚く歩を後目にさっさとしたくを終え足早に去る。ちょっと涙目だった。"歩の前ではクールな感じでいたい"自然とそう思っていた。家に帰りベッドに突っ伏してずっと、ずっと歩の事を考えていた。
俺…嫌われた…?別れたいのかな…てかそもそも付き合ってんのかな、俺ら……でも普通女の子の方がいいよな…歩だって男なんだから挿れたいだろうし…
…歩……歩………
そして歩の名前を呼びながら、眠りにおちた。
次の日から歩を避けた。別れを告げられるのが怖くて、距離をおきメールも電話も無視した。そして何日か経ちふと気付いた。これじゃあ別れたのと同じじゃないか。何やってんだ俺…でもずっと避けていたのに突然普通に接する事ができる訳もなく、避け続けていると、歩からメールが届いた。
それまで『どうした?』とか『俺何かした?』とかだった歩のメールが『明日の10時ス○バで待ってる』と変わった。もう終わるんだと直感した。とりあえず『分かった。』と久々の返信をして、歩を失ったら俺どうしようと考え始める。悩みに悩んで寝ずに翌日の10時を迎える。
店に入ると歩の背中を見つけ深く深呼吸をする。落ち着け俺…
近付くにつれ心臓がうるさくなる。


『歩』の最初へ 『歩』 1 『歩』 3 『歩』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前