彼女が水着に着替えたら-4
◇ ◇ ◇
俺達の住む街は田舎で、歩仁内家のコテージのある所はもっと田舎で、俺達がやって来た海水浴場もまたかなりの田舎なんだけど、目の前に広がる人のごった返す様子は、まるで祭りかなにかあるんじゃないか、それぐらい賑わっていた。
青く澄んでいるわけでもない。ゴミがあちこち落ちているような汚い海なのに、右を見ても左を見てもはしゃぐ人ばかり。
海というのは、人のテンションを上げさせる何かがあるのだろうか。
かくいう俺も……。
「さーて、女性陣はどんな水着を御披露目してくれるのかな」
海の家に併設されている更衣室から出てきた俺達。
そんな俺の気持ちを代弁してくれたかのように、修が浮き輪を膨らませながらそう言った。
「やっぱり水着と言えばビキニだよな」
州作さんも、ビーチボールを膨らませながらそう言う。
「でも、江里子も桃子ちゃんもビキニなんてとんでもない! ってタイプだからなあ。ここは中川さんに期待だよな」
「だな。沙織は細いけど結構胸でかそうだし。オレの目算だとDカップはあるな、ありゃ」
「楽しみだねー、大山くん?」
歩仁内と修は、そう勝手なことを言いながら、俺の方をニヤニヤしながら見つめてきた。
――そう、沙織の水着姿を期待しているのだった。
キス以上のことを意識したのは、付き合ってわりとすぐだった。
俺達のグループでも、経験があるヤツが半数以上だったし、できるものならすぐにでも童貞を捨てたいほどだった。
だけど、いつもいい雰囲気の時に怖じ気づく。
沙織に長いこと片想いをして、ようやく付き合えた俺にとって、憧れの気持ちが強すぎて、沙織に手を出していいのか、迷うのだ。
だから、年頃の男が自己処理として欲望を吐き出す行為の時、いかがわしいDVDなんかを観ながら、好きな女に置き換えてヤる……なんて話はよくあるけれど、俺の場合はどうしても、沙織をオカズにはできなかった。