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愛しているから
【青春 恋愛小説】

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彼女が水着に着替えたら-2




   ◇   ◇   ◇




如才ない、とは歩仁内のためにあるような言葉だと思う。


キャンプを行う前に、一度州作さんと下見に来て、掃除をしたり、必要なものを揃えていてくれるなんて、高校生が気が付くだろうか。


それほどコテージの中は、ホコリなんて全くない、綺麗な状態だった。


二階建てのそれは、コンパクトな作りになっていて、部屋の一つ一つは小さかったけど、それでも簡単なキッチンもある、小さな風呂もある。


俺は、歩仁内家の偉大さを感じずにはいられなかった。


そんな風にコテージを一通り見て回った俺達は、リビングに荷物をひとまとめにすると、自然に歩仁内兄弟を中心として、輪を作っていた。


「え、二階に部屋が二つあるので、そこで男部屋と女部屋に分けます。

そこで荷物を置いて、少し休んだら、さっきの海水浴場まで行って、お昼を兼ねて一泳ぎしようと思うんだけど」


ゴホンと咳払いしてから歩仁内がそう説明するので、思わず


「目の前に海があるから、ここでいいじゃん」


と言った。


さっきの海水浴場って言ったら、人でごった返してたあそこか?


あんな芋洗いみたいなとこで遊ばなくても、目の前にはこんな貸し切り状態の海があるなら、ここで遊べばいいのに。


恐らくみんながそう思ったはずだ。


だけど、すかさず口を開いたのは、州作さん。


「そうできればベストなんだけど、ここ、遊泳禁止区域なんだよ。

波も高くないし、ちょっとくらい平気だろ、なんてオレも思うんだけど、でも、楓の友達に危ない目に合わせるわけにはいかないから。ごめんな」


申し訳なさそうに手刀を切る州作さんは、やっぱり大人なんだなと痛感させられた。


あくまで俺の言い分に同調して、傷つけないようにしつつも、ちゃんと社会のルールに従うしっかりした人。


「んじゃ、仕方ねえよな。おし、じゃあ泳ぐ準備をするか」


修がそう言うと、みんなは荷物を部屋に入れるため中に階段を昇っていった。


楽しそうな話し声が遠ざかっていく中、俺はふう、とため息をつく。


なんか、かなわねえなあ。


ただ、そう思い知らされた。


目先のお手軽さにとらわれている俺と、ちゃんと安全面に配慮した発言のできる州作さん。


人の彼女にちょっかいを出すチャラい奴と思っていたけど、なんだかんだでちゃんと保護者としての責任を果たそうとしているし。


それに比べて、自分の何も考えていない俺の発言が、いかにガキっぽいか。


そんな自分を沙織に見られたくない俺は、ただ下唇を噛み締め、俯くだけだった。



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