お仕置き-8
田宮が奈緒の肩から手を離し、正面に立った。
「君は嘘はついていない。しかし自分が梨田君達を狂わせてしまったという自覚がないようだ。」
「じ、自覚…ですか…?」
ニヤリと口元を緩める田宮。
「梨田君達が狂ってしまったのは、君の欲求不満さが溜まりすぎて体から男を欲しがる匂いを分泌させたからなんだよ?オスは発情したメスのフェロモンに理性をなくし、そして発情してしまったんだ。だから梨田君達が狂ったのも、川来君達が彼らの被害にあったのも全て君の責任なんだよ。」
思わぬ展開に困惑する奈緒。
「そ、そんな…」
続く言葉が出ない。考えようによっては否定できないからだ。しかしその理論を覆すだけの反論が出来ない奈緒。言葉に詰まってしまう。そんな奈緒をニヤリと見つめながら田宮は信じられない事を言った。
「一連の騒動で対処しなければならないのは君の性欲だという結論に至ったんだ。君の欲求不満から来るフェロモンを絶たなければこれからも第二、第三の梨田君を産んでしまう。だからこれから君を徹底的に教育してやるつもりだ。」
「き、教育…?」
「ああ。君の欲求不満の肉体を、ね?」
まさかこんな事態になるとは思わなかった。田宮が自分を教育するという意味か、違う意味か分からなかった。しかし今の田宮の顔を見れば分かる。完全に獲物を仕留める前の野獣の顔だった。奈緒は急に怖くなった。
「もう二度と欲求不満フェロモンを分泌しないですむ体にしてやるからな、松上君…。」
田宮はそう言ってネクタイを緩めた。
「ち、ちょっと待って下さい部長…。何をするつもりですか…?」
怯える奈緒。
「大人なら、分かるだろ?梨田君には許して、僕には許さないだなんて言わないよね?君は未だにフェロモンを分泌しているようだ。僕を狂わせようとしている。」
「な、何を言ってるんですか…!?」
「君だってしたくてたまらないんだろ?梨田君が居なくなってガッカリしているのではないか?それがまた欲求不満となりフェロモンを分泌させているようだ…。フフフ、松上君、君は男を惑わす危険な女だ。すぐにでも教育しないとこの銀行の風紀に関わる。」
「そ、そんな…止めて下さい!部長…!」
身の危険を感じた奈緒はとっさに逃げ出した。会議室を飛び出して震えながら逃走する。
「お仕置きだ、松上奈緒…。フフフ」
田宮は目をギラつかせて発情メス猫を狩りに出かけたのであった。