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冥土の土産
【SF 官能小説】

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アリカ……そして-1

 野球帽を被ったその少女はパッチリした目を見開いて俺に言った。
「お父さん、一緒に遊ぼう」
 俺は何して遊ぼうかと戸惑った。少女の短パンからはみ出した太腿が眩しかった。
「アリカ……って呼んで、私のこと」
 俺は彼女……をアリカと呼んで肩車をしてやった。どうだ。アリカ、嬉しいかい?
「うん、これしてもらいたかったの、お父さんに」
 アリカには父親がいなかった。家庭の事情は一切知らない。ただアリカは小さい時から他の子どもには父親がいて、自分にはいないことを寂しく思っていた。
 そして他の子どもにはお父さんがいることを羨ましく思っていた。組織員の俺が子ども会の育成に携わっているとき、アリカは俺にとても懐いた。
 俺の中に自分の理想の父親像を見ていたのかもしれない。だが、俺は特定の子どもに対して贔屓(ひいき)をすることはできない。
 だからアリカが俺にこう言った時、冗談まじりに体をかわさなければいけなかったのだ。
「海野さん、一度で良いから『お父さん』って言って良いかなぁ?」
 そして俺はタイムポケットの中で『良いよ』と返事をしてあげたのだ。
 アリカは幸せそうだった。ウサギのような前歯を見せて顔一杯に笑顔を咲かせた。俺には娘を持った経験はない。だがきっとこんな感じなんだろうなと思った。
 ずっと手を繋いであちこち歩いて色々な話を聞いてあげて時間を過ごした。本当にあっという間に時間が過ぎて行った。


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