投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

好き…だぁーい好きなんだからっ!
【幼馴染 恋愛小説】

好き…だぁーい好きなんだからっ!の最初へ 好き…だぁーい好きなんだからっ! 122 好き…だぁーい好きなんだからっ! 124 好き…だぁーい好きなんだからっ!の最後へ

断ち切って…-5

多くの年寄りスタスタと多忙そうに歩く看護士に医者点滴を持ちパジャマを身に纏いノロノロと歩く患者、鳴り続ける医師を呼ぶアナウンス、苦い薬の臭い。

私は、もう足を踏み入れるはないと思っていたこの病院へ再びやってきてしまった。

「絆…。」

ふいに彼の名を口に出す。伊藤サンが「会ってあげたら?」何て言うモンだから…。別に
私が我慢出来ず会いに来た訳じゃないんだからねっ!

そう、これは絆の為…。伊藤サンの言う事は確か、残り僅かの命ダガ、それでも少しは笑っていられるように。私はそう自分に言い聞かせ、彼のいる病室へ。


「絆?……。」

皮肉にも彼の病室は頭で既にインプットされていて、受付等で聞くまでも無く、真っ直ぐに目的地へ辿り着いた。ソーっとドアを開け、ベットに居るであろう彼を探す。

「あ……れ?」

彼が今、どんな状態なのか知るのが恐かった、このまま死を待つんだ、風呂にも入らず髪
何か白くなってるのでは?…そう思うと、それもこの病院へ行きたくない理由の一つだ。
彼の姿はなく、トイレかな、食事かな、先生と話してるのか…。様々な憶測をするも彼の部屋を見るとその可能性は消え、カバンやお見舞い品すら何も置かれていなく、今更ながらベットが閉まってある事に気付き。部屋を間違えた、そう思い改めてネームプレートを
見ると、そこには何も書かれておらず。

頭上に?マークが浮かぶ、いや間違えている筈が無い、病室の窓を眺めると、そこには以前彼と見た水族館が見えて。

やっぱり、間違ってない。彼の病室はここだ、…ならどうして?

「あら、貴女は、確か…。」
「!……。」

こりゃまた良いタイミングで、絆が生前お世話になっていた看護士サンが通りすがり、良く見舞いに来てた私の事を覚えていたようで。

「今日はどうした、?!」
「あのっ彼はっ!?彼は確かにこの部屋で入院してた筈。」

言葉を遮り、藁をもすがる思いで、看護士サンの肩を掴み。

「…移動、したんですよね?何処です?教えて下さいっ!」
「長谷川君、ホント可哀想よね、皆と離ればなれとなって…、。」
「!!」

そう申し、瞳を閉じ口を手で押さえ、首を横に向ける。……まさか。

「あ、ちょっと!」

声を挙げる看護士サンに背を向け、床を思いっ切り蹴り、こんな病院を後にする。

なによっ

何なのよっ!

私、最高にバカじゃないっ!

伊藤サンが勧めるから?絆が寂しい思いをしてるから?

全部自分の為じゃないっ!

大好きな彼に会えなくて、彼の顔が見たくて

そして今、そんな期待を全て裏切られ

いや、こうなる事は解ってた、幾ら二十歳までったって彼の持病は重たい、故に運が悪けりゃこういう結果だってありうる。

結局私は駄目だった、あの観覧車で約束を聞き、病院へ去っていく彼の背中を見てから私
は吹っ切れたように彼との言いつけを守り、彼を忘れ明るく振舞ったつもりだった。それなのにっ!。

伊藤サンがあんな事を、いやいやまた人のせいにして、全ては私が、私が弱いから。

ゴメンね、絆

約束、守れそうに、無い……。

この広い世界に、たった一人取り残されたような、そんな深くそして重たい孤独感。

絆、戻ってきてよ……。


次回、17話へ続く。


好き…だぁーい好きなんだからっ!の最初へ 好き…だぁーい好きなんだからっ! 122 好き…だぁーい好きなんだからっ! 124 好き…だぁーい好きなんだからっ!の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前